大宮ふとん店深層調査報告書 ―倉庫の奥は昭和で時が止まった― 令和の来客、昭和の亡霊に遭遇す
「ふとん店の奥から“昭和の亡霊”倉庫」**
大宮ふとん店の“プチ経済バブル”は、あのダサいノボリと祖母のいんすたバエ看板のおかげで続いていた。
聖地巡礼のファンが増え、謎の在庫が売れていくスピードは異常。
ついには麗奈父がひと言。
「倉庫の奥、開けるか…そろそろ在庫も尽きてきたし」
そう、店にはもうひとつ“禁断のエリア”があった。
それが 「奥の引き戸」。
誰もいつ開けたのか覚えていない。
父曰く「俺が若い頃に閉めた気がする」。
母は「猫の寝床にしてるから放っといていい」と謎の主張。
しかし商売好調のいま、在庫補充は緊急課題。
ファンが“昭和レトログッズ”を期待して来る以上、もはや逃げられない。
父は意を決し、引き戸の取っ手をつかむ。
ガタッ……
キィィィィィ……
ミシミシミシミシ……(建物が悲鳴)
「開いたぞ!」
父のドヤ顔は完全に“遺跡発掘隊の第一発見者”だった。
その瞬間、倉庫の奥から冷気とともに現れたのは――
昭和の亡霊コレクション。
・昭和56年の金利表(年利8%など、令和ではホラー)
・どこの誰かわからない昭和アイドルの販促ポスター(保存状態だけ妙に良い)
・市内局番2ケタ時代の分厚い電話帳(重い)
・新品の“蚊帳”(なぜか4セット……誰が買うのか)
・昭和の夏祭りで使ったであろう謎のハッピ
・昭和の少年野球チームの帽子(恐ろしいことに未使用)
麗奈は絶句した。
「なんで蚊帳が新品なの……」
父は胸を張る。
「いやぁ、昔は一家に一張だろ?」
母「令和に蚊帳買う人いる?」
祖母「昭和はつい昨日のことだよ」
三者三様のズレっぷりが見事に揃う。
さらに奥にあった木箱を開けると、古いスタンプカードが山盛り。
期限は昭和63年。
母が言う。
「これ、持ってくればスタンプ押す?」
父「もう押しとくか」
祖母「200個くらい押してあげよう」
麗奈、頭を抱える。
「令和の経済を破壊する気!?」
それでもファンは歓喜。
「昭和レトロ最高!」
「蚊帳ください!」
「昔の電話帳持ちたい!」
「ポスター欲しい!」
まさかの “昭和墓場市” が大成功。
SNSではこう呼ばれた。
「大宮ふとん店:時差のある店」
「令和で唯一昭和を買える場所」
祖母は誇らしげに言う。
「ほらね、昭和はつい昨日のことなんだよ」
麗奈は涙目で叫んだ。
「もうやめてーーー!!!」
しかし店の奥からは、まだ見ぬ昭和の亡霊たちが
「おいで、おいで」と手招きしている……(気がする)




