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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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20/45

上尾の秘境ふとん店、突然の全国デビュー

大宮ふとん店が店を構える「上尾中央商栄会」は、今日もいつものようにシャッターと静寂と地域猫が支配していた。

そこへ――。


「こんにちは〜!テレビ番組『ぶらり埼玉再発見!』です!」


突然、テレビカメラの一団が乱入してきた。

もちろんアポなし。商店街でも一番“取材してはいけない店”に、真っ先に飛び込んでしまったのだ。


■祖母、テレビに直撃される


最初に取材班が見つけたのは、

店頭でそろばんを弾きながら地域猫にあんパンを千切って与えていた麗奈祖母。


レポーターが元気よく声をかける。


「こちらが噂の“大宮ふとん店”さんですね!」


祖母はそろばんを止め、レポーターをじっと見つめた。


「あんた、誰?」


早速の空振りである。


「テレビの取材でして……」


「テレビ?なに、通販番組?ウチ、テレビ電話つながらないのよ。昔の番号しか知らないから」


※店の電話、昭和の2ケタ市内局番のまま。(0482-6*-****)



レポーターの笑顔が一瞬ひきつる。


■父、完全に無視


カメラが店の奥へ向かうと、そこには――。


競輪新聞を広げたまま動かない麗奈父(無言)。

完全に“春の甲子園を観るおじいさん”の構えだ。


レポーターが声をかけても、父はページをめくりながらこう言うだけ。


「今、買い目考えてるんで……静かに」


テレビ完全スルー。

生放送だったらスポンサーが泣くレベルの塩対応である。


■母、猫対応で手一杯


次にカメラが外へ向くと、店の横では麗奈母が地域猫に総勢5匹分のエサを配給中。


レポーターが近づく。


「こちらが地域猫の……」


「ちょっと待って、この子まだ食べてないの!取材なら猫のあとにして!」


地域猫優先の姿勢に取材班もたじろぐ。


■“麗奈ノボリ”と“インスタバエ看板”が全国デビュー


取材班は店の軒先に掲げられた、例のノボリを発見してしまう。


『戦隊ヒロイン 大宮麗奈の店!』

(ダサい昭和ブルーのフォント+麗奈のデフォルメイラスト)


レポーター

「……すごい存在感ですね……」


さらに横には、祖母が描いた謎の看板。


『インスタバエ ここ』

(手書きの可愛いハエのイラスト付き)


レポーターは震える声で聞く。


「これは……?」


祖母

「新種のハエが出るんだろ?うち捕まえたくてさぁ」


全国ネットで誤解が広がる未来が確定した瞬間だった。


■取材班、最後の砦・麗奈を求める


レポーター

「麗奈さんはいらっしゃらないんですか?」


祖母

「今日はイベントで東京行ってるよ〜。

でも布団買ってくれればサイン色紙ぐらいあげるよ(在庫あればだけど)」


テレビ側

(いや、我々は布団目的じゃ……)


■収録後、商店街騒然


取材班が帰ったあと。

商店街の人々が報告しに来た。


「……大宮さんとこ、テレビ映りますよ」


麗奈母

「あらやだ、クロじいの毛づくろいシーン撮られちゃったわ」


麗奈父

「番組名、なんだって?……“ぶらり埼玉再発見”?

じゃあ俺、映るのは競輪新聞と手だけか」


祖母

「あんたら、インスタバエのこと説明した?」


誰も説明していない。

どころか番組側も深掘り禁止の空気だった。


■放送当日、全国に衝撃


放送されたのは――


・店主3人のカオスな接客

・そろばん→暗算→電卓の三者三様会計

・“麗奈ノボリ”の異様な存在感

・インスタバエ看板の誤解

・地域猫の圧倒的支配力


番組SNSはコメントで溢れた。


「上尾にやべぇ店ある」

「インスタバエ看板、欲しい」

「大宮ふと ん店って字が欠けてるの笑う」

「おばあちゃん最強」


麗奈は東京で頭を抱えた。


「やめてよぉぉぉぉ〜!!!」


しかし祖母は言う。


「テレビに出るなんて光栄じゃないかい」


父は言う。


「布団、昨日だけで3枚売れたぞ」


母は言う。


「猫も映って良かった〜」


麗奈だけが泣いていた。


**大宮ふとん店は今日も平常運転。


突然のTV取材すら、何ひとつ“改善”につながらなかった。**

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