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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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16/52

七匹の猫侍 〜クロじい、麗奈を守るの巻〜

都内のイベント会場では、今日も戦隊ヒロイン大宮麗奈が

ステージの光を浴びていた。


華やかな衣装に完璧なスタイル、堂々としたMC。

“埼玉のオシャレ番長”は今日も絶好調。


だが彼女には 致命的な弱点 があった。


脇が甘い。とにかく甘い。


スマホは使いこなせない。

スキャンダル対策の危機管理も皆無。

週刊誌のカメラマンからすれば、

「宝の山。」

「最高の獲物。」

みたいな存在である。


そして──その日。

ついに決定的瞬間が訪れる。


◆青年実業家との2ショット!


“激写”寸前の麗奈


イベント後、人気実業家のイケメン兄さんとディナーに行く麗奈。

悪気はない。ただの食事……

のつもりなのだが。


通りの向こうで

望遠レンズを構えた黒スーツの男が二人──。


「……来たな、週刊誌!!」


小春やみのりが心配して電話をするが、

当の本人はのんきに


「今日はちょっとおしゃれしてきたの♡」


と無防備の極み。


その瞬間、ある影が動いた。


◆クロじい、出陣。


大宮ふとん店の軒先にいたクロじいは、

遠くの気配に目を細めた。


「……お嬢(麗奈)に危機じゃな」


高齢で足腰はヨボヨボだが、

かつて“上尾の火野正平”“和製シナトラ”と呼ばれた

伝説のプレイボーイ猫は、いまも判断だけは早い。


クロじいが「にゃっ」とひと声。


するとどこからともなく、

地域猫たちがぞろぞろと集まってきた。


シロばあ


茶トラのサブ


ハチワレのマサ


キジトラの銀二


ホクロのついたミケ姉


そして新人の三毛太郎


総勢七匹。

“七匹の猫侍ねこざむらい” である。


◆黒沢映画顔負けの猫作戦、開幕


週刊誌カメラマンはビル影から狙っている。

麗奈は無防備に歩く。

青年実業家はイケメンで絵になる。


「完全にバレる!」

「終わった!!」


……と思った瞬間。


◆作戦その1:視界を奪え!


クロじいがカメラマンの足元にすり寄り、

「にゃあ(今だ、行け)」 と合図。


途端に地域猫たちが

レンズの前を縦横無尽に横切る。


シロばあは堂々。

サブは高速ダッシュ。

銀二は何故かモデル歩き。


「猫!? 見えない! なんだこいつら!!」


カメラマン大混乱。


◆作戦その2:音でかき乱せ!


ミケ姉が突然フェンスをよじ登り、

絶妙なタイミングで空き缶を落とす。


カランッ! カランカラカラッ!


カメラマンの注意が逸れる。


その隙に三毛太郎が

カメラバッグの上にドンと座り込み、

無表情で一点を見つめる。


「おい……動けよ……」

「どけ……」


三毛太郎はウインクした。


“任務遂行にゃ”


◆作戦その3:最終兵器・クロじい


カメラマンが最後の足掻きを見せる。

ビルの影から飛び出し、

麗奈を狙ってシャッターを切ろうとした瞬間──


クロじいが視界に“ド真ん中ジャンプ”。


しかも、

なぜかスローモーションに見える。


シャッターには


「麗奈 + イケメン」ではなく

 「クロじいのどアップ」


だけが写った。


カメラマンは叫んだ。


「何で猫がピンで映ってんだ!?!?」


◆麗奈、無事帰還。


危機一髪でスキャンダルは回避。


翌日、ふとん店の裏で麗奈はクロじいを撫でながら言う。


「ほんと助かったよ……ありがとうクロじい」


クロじいは

「当然じゃ」

って顔で毛づくろいを続ける。


若い猫たちは尊敬の眼差し。


サブ「クロじいさん、マジ渋すぎっす」

銀二「レンズ前の飛び出し、完全に映画でしたよ」

ミケ姉「今度から“クロじい監督”って呼ぶ?」


クロじいは答えない。

ただ目を細めて、ふとん店の空気を吸い込んだ。


“お嬢(麗奈)は、ワシらが守る”

その背中が語っていた。


◆エピローグ:週刊誌の見出し


翌週発売の週刊誌には

こんな謎の記事が出た。


「上尾市、猫の動きが不自然に組織的

  謎の猫集団の存在か!?」


もちろん麗奈の写真は一枚もない。

全てクロじいのドアップで埋まっていた。


地域猫たちの勝利である。


――こうして今日も、

上尾の七匹の猫侍は、

戦隊ヒロイン大宮麗奈の名誉を守るため、

静かに、そして派手に暗躍している。

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