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大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


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大宮ふとん店・地域猫代表会見(?)

大宮ふとん店が“上尾のバエ聖地”と化して数週間。

週末には若者やファンが押し寄せ、ノボリやハエ取り紙の写真を撮る姿が絶えない。


だが――

この騒動に、ひそかに深いため息をついている存在があった。


地域猫一同である。



大宮ふとん店は昔から、地域猫のオアシスだった。

祖母が毎朝こっそり煮干しを置き、

母が昼過ぎにカリカリを足し、

父が夜、酔った勢いで缶詰を投下。


猫たちにとっては、**“上尾の三ツ星レストラン”**だったわけだ。


店先には日向ぼっこをする猫、ダンボールで寝る猫、

謎の古い布団の山で王座を築く猫……

穏やかな猫的日常がそこにはあった。


ところが、“麗奈バエノボリ”と“手書きインスタバエ看板”がバズったせいで、

店の前は常に人だかり。

猫たちが昼寝していると、

「猫かわいい〜!」

「この子も映える〜!」

と写真を撮られ、安眠妨害。


ついには猫たちのボス――通称クロじい(推定18歳、ほぼ無敵)が立ち上がった。


黒くてガリガリ、片耳欠け。

歴戦のオーラをまとった“地域猫界のおきな”。


クロじいは、麗奈母に向かって堂々と歩み寄り、


「にゃー……(意義申し立て)」

と深刻な声を出した。


麗奈母は、昔から“猫語が理解できる気がする”と言って憚らないタイプである。

近所の主婦からは

「理解してるんじゃなくて、自分の都合よく翻訳してるだけでは?」

と噂されていたが、本人だけは自信満々。


そして今日も――


母:「ちょっと待ってクロちゃん……うんうん……なるほど……」

周囲のファン:「えっ、会話してる!?」

クロじい:「にゃ〜〜〜〜(ここはオレらの縄張りなんじゃ)」

母:「わかったわ。落ち着いて聞くね」

クロじい:「ニャッ(静けさ返せ)」

母:「えぇ……静かな生活空間を返せ……」

クロじい:「にゃー(そして、煮干しの量を増やせ)」

母:「あっ、要求入ってる……」


麗奈:「ちょっとお母さん!? ほんとに分かってるわけ!?」

母:「なんとなく。でもクロちゃん、怒ってる」

クロじい:「ニャ(怒ってるに決まってるだろ)」


そして麗奈母は、

クロじいがまとめた(?)という**「地域猫一同・意見書」**を読み上げた。


【地域猫 代表 クロじいより】


・最近人が多すぎて寝られない

・写真を撮られると魂吸われる気がする

・ハエ取り紙に仲間がくっついた

・ノボリの陰でひなたぼっこできない

・でもご飯は増やしてほしい

・以上、改善求む


店の前に居合わせたファンは爆笑。

麗奈は顔を真っ赤にして叫んだ。


「猫の意見書って何よーーー!!

 ていうか、魂吸われるって何!?」


祖母も加わって言う。


「そりゃあ猫も写真はイヤだろうよ。

 インスタバエってのは、猫にも害があるのかい?」


そこへ父がのんきに現れ、


「地域猫の声は大事にしねぇとな。

 よし、ノボリをちょっと横にずらすか」


麗奈:「いや、解決そこ!?」


結局、ふとん店の前に“猫優先ゾーン”が即席で設置され、

クロじいは満足げに座り込んだ。


クロじい:「にゃ(よろしい)」

母:「今日もありがとね〜クロちゃん」


そしてSNSにはこう投稿される。


「上尾のふとん店、地域猫の声が通る店」

「猫にも優しいふとん店」

「#クロじいに会いたい」


麗奈は頭を抱える。


「……もう何屋なの、この店……?」


だが、大宮ふとん店は今日も平常運転――

いや、“地域猫代表会見”を経て、

ますますカオスに拍車がかかっていた。


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