表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大宮ふとん店、本日もたぶん営業中  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/41

大宮ふとん店、まさかの“映え聖地”化

上尾の商店街の外れ。

看板の「と」の字が消えかかって「大宮ふ ん店」になって久しいのだが

突如として“新名物”が誕生した。


発端は、麗奈の父が調子に乗って設置した赤いノボリ。

昭和感満載のフォントで

「戦隊ヒロイン 大宮麗奈の店」

とデカデカ描かれ、さらに麗奈のデフォルメイラストが踊る。


最初は麗奈が悲鳴をあげ、「やめてよダサいから!」と懇願したものの、

SNSではこうだ。


「逆に良い」

「クセが強すぎて映える」

「上尾に聖地が爆誕」


投稿が増え、ついには“上尾の映えスポット”のタグまでつく始末。


ところが――

混乱の火にガソリンを注ぐのが、大宮ふとん店の店主で麗奈祖母の大宮タキ(82)。


祖母はスマホで「映えスポット」の文字を見てこう言った。


「インスタ……バエ? 新種のハエかね?」


翌朝、ノボリの隣にハエ取り紙3本が堂々と吊るされた。


揺れるハエ取り紙、揺れるノボリ。

カオスの風景にSNSは再炎上。


「#インスタバエw」

「#虫も映えるふとん店」

「#バエスポット」


「誰が虫呼べと言ったのよぉぉぉ!!」

麗奈は泣きそうだ。


しかし祖母は満面の笑み。


「ほら見てごらん、ハエもよく撮れとるよ。人気だろう?」


もはや何も伝わっていない。


そこへ父と母が追撃。


父:「目印になって便利じゃん」

母:「おばあちゃんの手作り、味があっていいのよ~」


麗奈は頭を抱えて膝から崩れ落ちる。


だが悲劇(?)はまだ続く。

祖母は「インスタバエ」の意味をさらに誤解し、

ついに手描きで看板を作りはじめたのだ。


しかも妙に絵心がある。


《インスタバエ ここ》

という文字とともに、

ほっぺが丸くて笑っている“ゆるキャラ風バエ”が描かれた

祖母渾身の看板が完成。


これがまたSNSでバズる。


「このバエめっちゃ可愛い」

「LINEスタンプにしてくれ」

「上尾のゆるキャラ新候補では?」


もはや“ふとん店”がどこへ向かっているか分からない。


麗奈は震える声で言う。


「おばあちゃん……お父さん……お母さん……

 ほんとにやめて……マジでやめて……」


しかし三人は完全にスルーだ。


父:「評判いいらしいぞ?」

母:「新聞載るかもね」

祖母:「よし、次は“バエの館”って書いた横断幕を作ろうかねぇ」


麗奈は悟った。


「この家族はもう止められない」


そして今日も上尾の片隅で、

ノボリとハエ取り紙と“手描きバエ看板”が風に揺れる。


そこには――

笑いを求める客、写真を撮る客、ハエを取る紙。


そして、小さく呟く麗奈。


「……ここ、本当にふとん屋なんだよね……?」


上尾の“映え”は今日も絶好調である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ