大宮ふとん店に新たな名物!?〜赤きのぼりと昭和の逆襲
上尾の風がまたもや笑いを運んできた。
戦隊ヒロイン・大宮麗奈の実家「大宮ふとん店」が、ついに――
ブレイクした。
きっかけは、あのトークショー。
月島小春が放った爆弾セリフ。
「みんなで大宮ふとん店に買い物行くぞー!!」
観客「オーーーッ!!」
麗奈「来なくていいからーっ!!」
……が、ファンは来た。
いや、本当に来てしまった。
迷いながら辿り着いた勇者たちが投稿するSNSは、毎日お祭り騒ぎ。
「#聖地巡礼」
「#ふ ん店(“と”が消えてる)」
「#麗奈父優しすぎ」
その結果――奇跡が起きた。
在庫が減った。
しかも、いつ仕入れたかわからない昭和の謎商品がバンバン売れていく。
「この電気あんか、昭和58年製って書いてある!」
「タオルケットに“ミレニアム記念”ってタグ付いてる!」
「なんか、枕カバーのキャラが令和じゃない!!」
だがファンたちは笑顔で買っていく。
なぜなら――ここは聖地。
価格はプライスレス。
祖母はそろばんをカチャカチャ。
母は「お釣りはきれいにキリよくしておくね」。
父は安物の電卓を連打しながら言う。
「サービスで2割引いとく!ヒーロー割や!」
……その日、一日の売り上げが普段の一か月分を超えた。
麗奈は頭を抱えた。
「ウチの実家、バズる方向間違ってる……」
だが、悲劇はここからだ。
調子に乗った父が新たな一手を放つ。
「宣伝は足で稼ぐ時代や!」
――そして生まれた、伝説の赤いのぼり。
「戦隊ヒロイン 大宮麗奈の店!!」
ド派手な朱色に金の稲妻縁取り。
下には、可愛くデフォルメされた戦隊スーツ姿の麗奈のイラスト。
バトンを持ってウインク、吹き出しで「おふとんで夢を守る♡」。
上部には手書きで「Presented by 大宮ふとん店」。
電話番号は、まさかの市外局番2ケタ。
父「しまったなぁ……まぁ、風情あってええやろ」
母「近所で評判いいし、いいんじゃない?」
祖母「麗奈がテレビに出てるみたいで立派ねぇ」
麗奈「やめて!! 赤すぎる!! 古すぎる!! 恥ずかしすぎる!!」
……だが、遅かった。
風にバタバタとはためく赤いのぼりは、
商店街の遠くからでも見えるほどの存在感。
通りすがりの客が足を止め、つぶやく。
「これ……平成どころか昭和50年代のフォントじゃね?」
「逆にセンスあるな……」
「#レトロ映え」
SNSでは瞬く間に拡散。
「#大宮ふとん店ののぼり見てきた」
「#フォントが時代を超越」
「#電話番号が化石」
商店街の他店主たちも、苦笑しながら口を揃えた。
「いや〜、大宮さんのところはもう何やっても許されるね」
「のぼり立てたら風格出たよな」
「次はテーマソング作るらしいよ」
そしてその夜――。
麗奈はステージ控室でスマホを見ながら絶叫した。
「え!? “大宮レッドの旗”ってトレンド入りしてる!?」
……こうして、大宮ふとん店に新たな名物が誕生した。
風に揺れる真っ赤なのぼり。
昭和の香りを撒き散らしながら、今日も元気にこう主張している。
戦隊ヒロイン 大宮麗奈の店!!
――上尾の風は、笑いながらそよいでいた。




