5・私に関する噂話
宮殿で聞いた私の噂話はひどいものだ。
何でもこの周辺の国を支配していて、残酷極まりないとか
金髪の高身長のイケメンだとか
大金持ちの息子だとか
何だか本人からかけ離れた噂話ばかりで
それは一体どうやってそんな情報になってしまったのか気になるが。
実際の私はというと
大金持ちの傭兵はやっていたが息子ではない。
しかし、私は高身長でもないし髪も黒い。
この地域を支配しているのは、有名な貴族で
もちろん私ではない。
その私に関する噂話は何年も続いているそうなので
考えられるのは、大魔術の失敗か暴走か
危険な薬草の使いすぎか。
いずれにしても良い話ではない。
しかも街中でも、まれにその噂話を熱心に信じているものもいるので
毎回、訂正するのが大変な思いだ。
まあ私だけではなく
有名な宰相が身分を偽って国を救ったとか
美形の若者が指名手配犯を捕まえたとか
根拠がわからない噂話もたくさんあるので
真実なんて、いかにどうでもいい扱いをされいるのかわかる。
信じたいものを信じているだけなのだろう。
自分を守ってくれそうな情報に飛びつくのは
この不安定な情勢だから仕方がないとも言えるが。
実際の人物とは、物語のように格好がいいものではない。