第八話
レイラと実験が終わった後はシナリマとの勉強だった。読み書きや少しの計算など最低限の教養は教えられるらしい。
リードにとってはすごく簡単なことなのだが思いの他苦戦していた。
読めはするんだけど書けないんだよなぁ、これ。そもそもなんで読めるんだ?明らかに日本語とは違うはずなんだが、、中途半端な恩恵はほんとにやめてくれ、、、
愚痴をこぼすがどうしようもないので渋々勉強を続ける。そこで集中を切らしたのかレイラがシナリマに言った。
「シナリマ様、なんで勉強しなくちゃいけないの~?」
シナリマは優しく諭すような口調で
「それはねレイラ、リードも聞いておくんだよ。力をつけないと、いつか自分の大切な人や友人が助けを求めている時に助けられないんだ。力というのはね、酷く危険なんだ。使い方を間違えれば容易く人を傷つけてしまう。だから力の使い方を間違えないように勉強をするのさ。」
やっぱりこのばあさん、経験値が半端ないな、、説得力がありすぎる。
静かに聞き入っていた2人を見て満足そうにシナリマは笑顔を浮かべ
「わかったかい?」
「「はーい!」」
元気よく返事をして、それから3人は勉強を再開したのだった。
ふぅ~、、終わったー。やっぱり元の世界の文字が定着しすぎて難しいんだけど。
机に少しぐったりしているリードとレイラはお互いを見て話し始める。
「大丈夫?レイラ」
「うん、、大丈夫だよ。でもお腹空いた、、」
2人とも会話をする気力もあまり残っていないのか話すペースが遅い。
確かに僕もお腹空いた、、早くご飯がほしい。あ~、日本のご飯が恋しい。ご飯だけはほんとに美味いんだよなぁ。
2人がお腹を空かせ待っているとようやくシナリマがやってきて
「2人とも、夕食の時間だよ」
その言葉に2人はすぐさま反応して乱暴に立ち上がりすぐさま食べ物の方へ駆け寄った。
「待ちなさい」
リード達はビクッと反応して恐る恐るシナリマの方へと顔を向けた。そこには笑顔なのだがどこか恐ろしさをも感じさせるシナリマがいた。
「まだ片付けが終わっていませんよ。しっかりすべきことをしてからにしなさい。」
有無を言わせぬその老人とは思えぬ迫力に2人は従う他なかった。とぼとぼと戻り勉強の後片付けをはじめる。
「よし、よくできたね。さぁ夕食にしよう。」
いつも4人で食べるご飯だが、頭を酷使したからなのか格別に美味しかった。
その夜、レイラと寝床へ着くとレイラはヒソヒソと言う。
「ねぇ、明日は一緒に前に行った花畑の所へ行かない?」
「内緒で行くの?」
「うん」
え、、怖くないのかよ、、子供って本当にすごいな。まぁ自分も人のことは言えないか、
リードは子供の無鉄砲さに驚くも自分も幼い時はよく1人で森へ行っていたため、どうしようかと悩む。ここが元の世界ならば危険は多少あるが、まぁ行っただろう。
ただ、この世界では話が違うのだ。リードにとって森に2人、子供で行くのは自殺しに行くとしか思えないのだった。そのため少し考える。
「・・・いつもの遊び場じゃダメ?」
「えー、だってつまらないじゃん!あんな教会の庭なんて、、」
「じゃあメリー様に言って連れて行ってもらお?」
「だってダメって言うもん、魔獣が出たからしばらくはやめるって。」
むむむ、、え、これって詰んだ?行かないとだめか?死ぬって死ぬってまじで。
確かに森は気になるし、生態とか気になるけど、、危険すぎるんだよ。
「そんなに行きたいの?」
リードがそう言うとレイラはコクリと頷く。子供の探究心はすごいものだと感心はするが賛同はできなかった。
「・・わかったよ、ただ明日じゃなくてまた今度でもいい?」
そう言うとレイラはニコっとしてまたコクリと頷き
「おやすみリード」
と言って布団に潜ってしまった。
「うん、おやすみレイラ」
リードはレイラが寝た後も考え続け、自分の考えが固まった後に静かに寝たのだった。