第六話
あ、危なかった~、、
リードは教会に帰ってからというもの今さらながらに、恐怖に震えていた。もし魔獣に気づかずにいたら、気づいたとして間に合わなかったとしたら、助けたが突進に自分が巻き込まれていたとしたら、、そんな起こり得たかもしれない未来に恐怖し足がすくむ。
足が震える、、心臓の鼓動もはやい。
あの時は無我夢中だった。だから動けた。今やれと言われたら絶対無理だ、、、
リードはわかっている。反省は大切だが過去において、もしもの話はあまり意味のない事だと。だが、人間の本能と言うべきか、想像してしまう、想像させられてしまう。ただ、多少の意味といえばその経験は楔に打ち付けられ、記憶は忘れ難いものになることだ。
ここはあの世界じゃないんだ。しっかりしろ!冷静に考えるんだ。
恐怖に陥っている自分を鼓舞し、落ち着かせる。リードにとって死という文字が脳裏に浮かぶことは初めてだった。ニュースでも見ていたし漫画やアニメでも見ていた。ただあんなにも身近にあったことはない。恐怖して当然なのだ。
レイラは大丈夫なのだろうか?
ふとそんな疑問が思い浮かんだ。トラウマになってやしないだろうか、隣にいるレイラを少し見てみる。
「ッッ!!!」
思わずリードは目を見開いた。なんと満面の笑みを浮かべて小さく鼻歌までしてるではないか。
僕の反応が嬉しかったのか?あまり魔獣のことは気に留めていなさそうだな、、
少し見すぎてしまっていたのか、レイラは困った顔をしたので誤魔化すためにも何か質問をすることにした。
「レイラ、今日は楽しかった?」
そうリードが尋ねると
「うん!とっっても楽しかった!!」
レイラは元気よく、そう返す。
「ほんと?それならよかった」
内心、安堵する。子供の時のトラウマというのは中々消えないものだ。リードは前世での出来事を思い出す。
たしか、牛乳は好きだったんだけど飲み過ぎて吐いて飲めなくなったんだっけ、、そんなことでトラウマになってるんだから魔獣でのトラウマとか普通に考えてやばいよな?いや、絶対やばい。
そんな自分の過去に苦笑しつつも、ほんとによかったと再度安堵する。リードはレイラにはいつも助けられているのだ。子供ゆえの純粋さに癒され、どうしようもない不安に何回心の支えになったか数えられない。
少しは返せてるといいな。
そんなことを思ったリードだった。
その日の夕食にて、リードは気になっていたことを口にだす。
「メリー様って魔法使えるの?」
「きれいだった!」
僕が投げかけた疑問にレイラも乗っかる。
「一応はね、ただ簡単な魔法しか使えないわよ?」
「おや?今日のワイルドボアのことかい?」
シナリマが反応する。
メリーはちゃんと報告しているんだな。まぁだからシナリマはメリーに任せているんだろうけど。そもそもボアっていうのか、ボア、、、イノシシの英語だったっけ?全部英語に変わるのか?まだ判断できないか、、
ひとまずこのことは後回しにする。
「はい。それでボアの処理はどうしようかと、、魔石は取ったんですけど解体はできなくて・・・」
そんな会話をメリーとシナリマはしている所に
「メリー様!レイラも魔法使いたい!だめ?」
するとメリーは困った表情で言う
「うーん、魔法は誰にでも使えるわけじゃないの。それにそういうのを教えるのは大きくなったらね?」
レイラは悲しそうな表情をして返事をする。
「じゃあ、また魔法みたいです!」
「それならいいわよ。また今度ね?」
そうリードがメリーと約束するとレイラはパッと晴れた顔になって喜んでいる。
よかった。元気になってくれたみたいただ。
リードはさらにシナリマは魔法が使えるのかと聞いた所、シナリマは使えないと言われた。
食事も終わり寝床へ着くとリードは寝る前のルーティンをこなす。そう、異世界に来てからというもの出来事を整理しこの世界の推測をするのだ。
シスターはみんな魔法を使えるわけじゃないんだな。まぁたぶん僕は使えそうなんだよな。一応感じ取れることはできたし、、
そんな推測を立てつつ、まだ少し恐怖で震える手をギュッと握りしめ明日へ備えるのだった。