表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/50

15_閑話_リックの夜間哨戒

「おっ!出来たっす!!」

思ったより声が張っちゃって、慌てて口を抑えたっす。

今は「北の山脈」から王都シータンパピアまでの復路で、時間は真夜中。

オレらは交代で夜間の哨戒をしてるっす。

そして今はオレの番で、しばらくしたら次はクローの番っす。

まあ、クローの魔術結界があるんで、何かあったら騒いで皆を起こすだけの役割なんすけどね。


オレの目の前には、今、魔術で作ったばかりの灯りが光ってるっす。

シャクローの町と、復路の車内で魔術を教わってたんで、哨戒の間もずっと練習してたっす。

そして今やっと、生まれて初めて魔術が成功したっす!

嬉しい…。

何より明日、クローにこの事を話したら、クローも嬉しそうな顔をしてくれる、そう思えるのが嬉しいっす。

これまでは、失敗してどやされることはあっても、成功して褒められる事なんて無かったっすから。

…親御さんがちゃんと居る家の子は、みんなこんな感じを味わって生きて来れてるんすよね。

羨ましいっす。

オレはこれまで、普通の家の子は食べ物も着る服も有って羨ましい、って思ってたっす。

子供のオレにはソレしか認識出来なかったから…。

でもクローと会って、今は考えが変わったっす。

本当に羨ましがるべきなのは、ちゃんと物事を教えてもらえる事、成功したら褒められるって事、だったっす。

だから、ソレをくれるクローに出会えた事は、オレの人生で最高の幸運だったって確信出来るっす!


…クローだけじゃ無いっすね。

ヴェロニカさんやセレナさんも、オレなんかに優しく物事を教えてくれるっす。

ゴミ屑を見る目じゃ無く、ちゃんとヒトとして接してけれるっす。

そんな今の環境が本当に幸せっす。

…いや、嬉しがってるだけなんて、貰うばかりなんてダメっすね。

オレももっと色んな事を覚えて、クローの役に立てるようにならなくちゃ。

そのためには、まだまだクローに教わる事は多いっす。


ここまで旅をしてきて、なんとなく分かったんす。

クローは普通じゃ無い。

魔術師のヴェロニカさんが驚くような魔術を知っていたり、司祭であるセレナさんが師と仰ぐほど治癒術に精通していたり、商人であるナスバレイさんが知恵を借りたくなるほど物知りっす。

ああ、あと、剣術の腕では体格で勝るオレが勝てないし、料理も上手いっす。

…異常っすよね?

こんなクローの役に立てる事なんてあるんすかね?

…いや、いくらクローが凄くても、体は一つっす。

クローが他の事をやってる間に、何か別の事をオレがやっておく。

それが出来るなら、オレにも存在意義がありそうっす。

…クローの代わりをする?

………う〜ん、イメージはつかないし、どんだけ精進すればそう成れるのか、見当も付かないっすけど。

でも、やるっす!

分かんない事はクローに相談しながらやっていけば、絶対、達成出来るって信じてるっす。


ん…?

目印にした薪の燃え具合からして、そろそろ交代の時間っすね。

考え事をしてると、時間が経つのは早いっす。

クローを起こしに行かなくちゃ。


………。

「クローくん…むにゃ……。」

セレナさん、完全にクローに寄り掛かって、幸せそうな寝言を言ってるっす。

「クロー、おま…は…。」

ヴェロニカさんは、セレナさんの逆側からクローの腕を掴んでるっす。

寝言も、なんか怒り口調のような?

「…ゔ〜ん。」

…クローは、うなされてるっすね。

何っすかね?なんか、このまんまの未来を連想させる様子は?

………。

このままクローを起こすと、二人まで起こしそうっすね。

よし、このままもうちょっと哨戒を続けるっすかね!


「うう…、リック…。」

クロー、ごめん無理っす!

オレもこの二人は怖いっす!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ