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12_シャクロー

やっとついた「北の山脈」!

一夏掛かってやっとここまで来た!

思えば、セーム様が襲われてからまだ3ヶ月も経っていないのか…。

途中、気のおけない仲間とも出会いつつ、北上を続けた終着地。

それがシャクローの町であり、目の前に広がる「北の山脈」だ。

いやぁ、感慨深い。

……。

うん、まあ思ってたような牧歌的な光景では無いし、見える山々のあちこちに山賊のものと思しき家がチラ見えしてるし、煙まで上がっているのも見える。

確かに山脈と言うだけあって、圧巻の巨きさの山々なのだけれど、裾野辺りのソレが雰囲気を盛り下げてくれる。

う〜ん…。

ま、でもそれをこの目で見れた事が大きいよね。

話に聞くだけより、実際に目にしなくちゃ分からない事もある。


あと今、僕らは高台になっている丘の展望台から、「北の山脈」を眺めている訳だけれど、目線をやや下に向けると、何やら高めの塀でガッチガチに囲われた区域が見える。

「あれは魔族用の居住区ですよ。魔王国とは交流があるため、彼等がヒト側で過ごすための区画が用意されているんです。」

僕らが「北の山脈」を見たいと言うのを聞いて、この展望台まで案内してくれたナスバレイさんが説明してくれた。

同じような区画は魔族側にもあって、ヒト側の行商人や役人が駐在しているらしい。

基本的に彼等はこの区画から出る事は禁じられているし、ヒトも限られた人物しか中に入れない。

そのため、この区画の周りは厳重に警備されていて、入出りする者が居ないか監視されている。

「欲しい物がある場合はどうしてるんですかね?」

「ちゃんと認可を受けた商人が、塀の一部に設置された商業スペースで売買が出来るんです。斯く言う私も認可をいただいております。」

「…それって国から信用されてるって事ですよね?凄いです!」

「い、いやぁ…。」

役人だって馬鹿じゃない。

あの場所でヒトと魔族が関わる問題が起きれば、あっという間に国際問題になる。

最悪な流れを辿れば、それが人魔大戦の引き金にだってなりかねない危うさを秘めている場所だ。

そんな所に信用も出来ないヒトを出入りさせないだろう。

「…実は、リグレット様が気に入っている品がありまして。私が「北の山脈」に来るのは、それを入手するのも目的の一つなのですよ。」

そうか、だから会頭であるナスバレイさん本人がシャクローまで来る必要があったのか。

そこまで厳重だと、認可された商会の一員と言うだけでは、魔族用区画への出入りは許されないだろう。

おそらく、個人単位での認可と言う事になっているはずだ。

リグレットちゃんが、僕とヴェロニカさんの考えている通りの人物なら、認可を与えるのも可能だろう。

「さて、では私はこのまま魔族用区画へ行ってきます。皆さんは冒険者ギルドへ寄るのですよね?」

僕らは今朝、朝早くシャクローに着き、ニーア商会に寄ってからからここに来た。

その際、小さい町中用の荷台の馬車に、積み荷の一部を移していたけど、あそこで売買するための品だったのか。

「はい。途中で見たので、歩いて向かいますよ。」

「分かりました。夜は我が家に泊まるよう準備しておりますので、暗くなるまでにお越し下さい。」

「何から何まですまないな、ナスバレイさん。」

ヴェロニカさんがリーダーとして礼を言う。

「いいえ、お気になさらず。では、またあとで。」

そう言って、ナスバレイさんは魔族用区画に向かって行った。

護衛は要らないのかとも思ったけど、説明を聞く限り、ヒトが多く訪れるのは煙たがられそうだ。

それに、街道と違って衛兵も見回りをしている。

トラブルの心配は不要なんだろう。


「さて、じゃあ向かうか?」

「僕はもう良いですよ。リックとセレナさんは?」

「はい、もう大丈夫です。」

「大丈夫っす!」

二人も機嫌が良さそうだ。

まぁ、楽とはいえ、馬車の荷台にずっと乗ってるのも疲れるものね。

前世世界のようにサスペンションの利いた荷台なんて無いし、街道とは言え道も舗装されてないからガタガタなんだよね。

「よっし、じゃあトレントのクエスト確認に行きますか!」

「…は?お前、それ本気で言ってたのか?」

「おやおや?ヴェロニカさんは僕がAクラス推奨の「アーク・ボア」を倒したのを見てましたよね?」

「あれは準備ありのうえ、相性もあったろうさ!トレントはBクラスだからって甘くないぞ?「アーク・ボア」ほどで無いにしても、建物くらいある巨木が全身をしならせ、巨体とは思えぬ速さで攻撃してくるんだ。」

あー、なるほど。

素早さもあるタイプね。

加えて全身硬くて並の武器では歯が立たないと?

ヤッバいねぇ。

「…でも、全身の移動速度はそこまでじゃ無さそうですよね?枝による攻撃も、近付かなければ良いだけです。」

「う〜ん、まあ正直、一応止めてみてるだけで、止められるとは思ってないよ。だが、ワタシらはもっと遠くで見てる事しかしないからな?」

「了解です。では行きましょう〜。」

「了解しちゃうか〜…。」

ヴェロニカさんは、それ以上反対する事無く付いて来てくれた。


結果から言うと、トレントはちゃんと常設クエストが立っていた。

なので、狩れたらギルドまで持ち込めば素材の買い取りまでお願いできそうだ。

残念ながら「属性付き」の個体の目撃情報は聞かなかったので、普通のトレントを狩る事になりそうだけど、暇にしてるよりはずっと良い。

それに路銀もそろそろ気になってきた所だったしね。

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