5-3音*.♪❀♪*゜ 世界の主
世界の巫女────。
あるいは、世界に選ばれし者。
世界と繋がり────世界の秩序とバランスを保つ為、世界を守護するのが役目。
そして、時には神々と共に護り見守る────。
世界の主から祝福を受け、世界の愛し子になることで巫女となるのだ。
たとえ。
ヴァンパイアであっても────。
『世界の巫女よ────。新たな役目を告げる。
第十二真祖ラティーナを見つけ出し、レッドダイヤモンドを彼女に渡すのです。そしてレステーレを復興せよ』
『『『『はい、主様』』』』
世界の主がそう告げると、4人の巫女の体にうっすらと神紋が現れ……消える。
『それともう一つ。世界の巫女である君達には、神々とパートナーを組んでもらいます♪』
『『『『パートナー??』』』』
ニコニコ楽しそうに言う世界の主とは反対に、4人の巫女達は頭にはてなマークを浮かべて首を傾げる。
『そう。今までも何度かあったと思うけど、巫女と神が力を合わせて、この世界を護るのが通常なんだ。
巫女が受けた役目は、巫女とパートナーの神で熟す。
新たな力を得ることにも繋がるから、これから先は一緒に行動してもらうよ。誰とパートナーになるかはもう決めてあるから、発表するね』
柔らかな微笑みを浮かべている世界の主に、心臓の鼓動が早くなる。
(誰とだろう……。なんとなくユウ、ヨウな気がするけど、違ったら……いや、誰となっても上手く熟せるとは思う!思うけど……できるなら2人がいいなぁ〜)
腕の中にいる白兎をぎゅっと抱きしめ、密かに心の中で祈る。マイナは緊張しながら、世界の主の言葉を待った。
『まずは桜の巫女マイナのパートナーは……』
ドクン────ドクン。
心臓の鼓動が大きくなる中、世界の主は告げる。
『ユウとヨウ────。君達三人はこれから先、ずっと一緒に行動してもらうよ。この中で誰よりも三人はとても相性がいい、唯一無二のパートナーだ。マイナ、ユウ、ヨウ、これからも頼りにしているよ』
マイナは……ほっと胸を撫で下ろす。
『了解。頑張ります!』
『了解』
『だと思ったよ……』
マイナとユウは微笑み、ヨウは軽く笑う。
『そして陽の巫女ココイのパートナーは……』
ココイは嬉しそうに顔を輝かせている。誰がパートナーになるのか楽しみなのだろう。
『ツヅリとネオ────。三人のスタミナは飛び抜けてすごいからね。力業の仕事は君達に期待しているよ』
『任せて!』
『了解しました』
『おう』
ココイは軽くガッツポーズする。ツヅリは爽やかな笑顔で承諾し、ネオは無表情で頷く。
『次は、月の巫女ツムギのパートナーは……』
名前を呼ばれたツムギは、緊張した面持ちで世界の主の言葉に耳を傾ける。
『シオンとトワ────。君達は博識だ。三人の知識を合わして、これから起こる問題に活かして欲しい』
『はい』
『承知いたしました』
『精一杯努めさせて頂きます』
ツムギは小さく頷き、シオンとトワは右手の掌を左胸に当てお辞儀する。
『最後に雪の巫女アマネのパートナーは……』
名前を呼ばれていない残りのメンバーはもう決まっている。アマネは静かに次の言葉を待つ。
『イマリとセンリ────。君達の人脈は幅広い。繋がりを上手く使って、情報を集めてくれると助かる』
『了解です』
『お任せください』
『分かった……』
アマネは微笑を浮かべながら、イマリは人懐っこい笑みで返事を返す。センリは怠そうに答えた。
『これからは三人一組で行動してもらうから、よろしくね』
世界の主の言葉に全員が頷く────。
マイナは世界の主が言っていた《力》について思い出す。誰とパートナーになるかが気になって、聞けずにいたのだ。
『主様!新しい力とは一体どんな力なの?』
魔法関係が好きなマイナは新たな力に胸を弾ませ、キラキラ瞳を輝かせる。
『それ!私も気になってたっ。主様、どうなのー?』
ココイは指を鳴らしてマイナに同意すると、世界の主に視線を移す。
『同じく!私も知りたい』
『だね!教えて、主様』
ツムギとアマネも二人に同意すると、期待の眼差しを向ける。世界の主はふふっと笑うと、人差し指を唇へと当てた。
『それはまだ内緒♪』
『『『『えーー!』』』』
『彼等と共にいれば、いずれ得られる。そのうち分かるよ』
『『『……』』』
微笑む世界の主に、巫女達は残念そうに肩を落とす。その後ろで神々は目を細めたが、世界の主は穏やかに微笑むだけだった。
『頑張って。君達ならできるよ』
優しい柔らかな声音で応援する世界の主に少女達は頷く。全てを包むような優しさと慈愛に満ちた世界の主に言われると、何でもできる気がした。
『よーし、頑張るかー!まずはラティーナ様だね』
ココイの明るい声が響く。だが、世界の主は申し訳なさそうな表情を浮かべる。
『すまない……。肝心のラティーナの所在だけど、まだ掴めていないんだ…… 』
『主様でも探しだせないなんて……。ハンターはよほど、ラティーナ様を隠したいのね』
『真祖の血なら能力の高いヴァンパイアハンターが生まれる確率が高いからねー』
『でも……私達すら見つけだせない結界を張る人間なんて、存在するの……?』
『とりあえずいろんな場所に使い魔か分身を飛ばして、情報を集めるしかないかなぁ。レステーレの黒猫には監視をつけて泳がしているから、分かり次第みんなに言うね』
アマネ、ココイ、ツムギはマイナの言葉に頷く。
ヴァンパイハンターにとって、真祖の血は貴重。簡単に手に入れられるものではない。そう易々と見つかりはしないだろう。厳重に結界を張り、隠している筈だ。
故に第一真祖であるレイフィスや世界の主さえ、見つけられない。おおよその場所は分かれど、詳細は分からないのだ。
だが────レステーレの黒猫なら見つけられる可能性がある。彼等は第十二真祖ラティーナによって、ヴァンパイアにされた者達。血の繋がりを辿って、見つけられるかも知れない。黒猫は今も血眼になって探し続けている。見つかるのも時間の問題かも……と考えていると、ココイがあっ!と声を上げた。
『そうだ!ねぇ聞いてよ。今日、違法ヴァンパイアを探していたら、誰かに跡をつけられていたの』
ココイの言葉にツムギとアマネも反応する。
『私も……』
『同じく』
三人は、マイナ達が第六真祖と戦っている時、世界の主に言われた仕事をこなしていた。
第六真祖によって生み出された違法ヴァンパイアが、桜歌公園以外にも沢山いたのだ。その為、ココイとツムギが二手に分かれて倒していた。
一方アマネは第六真祖によって堕ちた神々を邪神から元に戻す為、神社を巡っていたのである。
『マイナはどうだった?』
ココイの言葉にマイナは記憶を辿るが、怪しい気配を感じたことも違和感もなかった。
側にいた二人なら何か知っているかもと思い、ユウとヨウを見る。だが、二人は軽く首を振っただけだった。
『なかったと思う。三人はどんな人につけられていたの?』
マイナが聞くとココイは明るく答える。
『えーとっ、華族ヴァンパイアで男だったよ。どこのヴァンパイアか分からなかったんだよねー。情報聞き出そうとしたら、襲ってきて……その、条件反射でつい、倒しちゃった〜』
『ごめ〜ん』とココイは手を合わせ謝る。
『ココイはヴァンパイアだったのね。私の時はカラスだったの』
『同じ鳥系ね。私は青いフクロウだったよ』
ツムギとアマネの話にココイは嘆く。
『えー!?いいなぁ、私もどうせなら鳥とかの方が良かったよぉぉぉ』
ガクリと項垂れるココイに、みんな苦笑を浮かべる。
『誰が差し向けたのか、探った方が良さそうだね』
『だね』
アマネの言葉にマイナは首を縦に振った。
『それならラティーナを探しつつ、君達を探ってる人物についても調べよう』
世界の主の言葉に4人の巫女は頷く。
『今日はこれでお開きだね。明日は入学式だよね?おめでとう。高校生活楽しんでね』
世界の主がそう言うと、体が光に包まれた。すると突然……睡魔に襲われる。
『おやすみ。良い夢を────』
柔らかな声が響く中、視界が暗くなり始める。
(────眠い)
4人の巫女と神々が立っている地面に穴が空いた。宇宙のような空間が広がる穴の中に、ふわりと落ちていく。
(これは、夢の星────)
視界が霞む中、暗闇に漂う光の玉は夢の星々だと気づいた。
宇宙のように美しい星の海をまだ眺めていたかったが、自分の意志とは反対に瞳が閉じる。
誰かに引き寄せられ、抱きしめられたような気がしたが、あまりの眠気に意識を手放せざるをえなかった……。
。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。
────真っ白なベッドの上、マイナは微睡む。
上品なデザインのベッドは柔らかく、白いネグリジェのレースがシーツに広がる。
『…………』
ユウは少しの間、ベッドの横で立ち尽くすとクスッと微笑んだ。
『ふふ……まさか私の神域に迷い込むとは……いや、僕のせいだね』
どこか嬉しそうなユウはベッドの端に腰掛けると、マイナの髪に指を滑らせ梳く。そして上体を倒し……そっと、マイナの頭に口付ける。
『おやすみ────』
マイナの体が淡く光だし消えると、魔力と神力の痕跡だけが残っていた。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎に魔力を注いで(ポチッと押して)応援頂けると嬉しいです。❀·̩͙꙳とても励みになります໒꒱·̩͙⋆.*