5-2音*.♪❀♪*゜ 世界の主
『レッドダイヤモンド、初めて見た』
いつの間にか近くに来ていた、ココイは興味深そうに、蝶の血晶石を見つめている。
純血種といえど、中々目にすることができない血晶石の『レッドダイヤモンド』。ツムギとアマネも、その美しさに魅入っていた。
『これは、ラティーナの血晶石だね』
世界の主は呟く。懐かしむように……指先で優しく血晶石に触れた。
『ラティーナ様の血晶石は蝶々なのね。……第六真祖のもあるの?』
『第六真祖の血晶石は魔界に返したよ。ラティーナ様のレッドダイヤモンドだけ、レイフィスお祖父様に事情を説明して借りたの』
『そっか、それは残念。第六真祖のも見てみたかったなぁ』
ツムギは少し残念そうに血晶石を見つめる。
『ラティーナ様の血晶石って確か、第六真祖に吸収されていたんだよね?こんなに綺麗に分離するなんて……』
アマネの言葉にマイナは魔界でのことを振り返る。
魔界で生まれた真祖の血晶石は、魔界に返すのが決まり。真祖の管理は第一真祖の役目である為、オルゼオールを倒したあと、第六真祖の血晶石をレイフィスへと渡しに魔界へ行ったのだ。
────マフィーヴィア帝国。
真っ赤な薔薇に囲まれた美しいお城の玉座には、妖艶な青年が座っている。
『すごいな────その歳で真祖を倒すとは。最年少だ』
この国の王である第一真祖レイフィスは嬉しそうに真紅の瞳を細める。
『本当に』
レイフィスの隣の椅子に腰掛けている綺麗な黒髪の優艶な女性は、この国の皇妃でありイルヴェリーナ皇国の初代女皇である第四真祖マノンだ。
『7人で倒したのでそこまで……』
『何をいう、謙遜するな。純血種であろうともそう簡単に倒せるものではない。特に君達の場合、一人でも倒せるではないか』
スイの言葉を遮ったレイフィスは口角を上げる。
『『『…………』』』
視線を逸らす兄妹達にレイフィスは、ふっと笑う。
『まぁ良い。お疲れ様。報告を聞こう』
スイが簡潔にまとめ報告を述べた。
『レステーレの黒猫は現在、監視をつけて泳がしています。命令通りオルゼオールの記憶を封印し、肉体も砂へと帰りました。血晶石も無事に回収しここにあります』
『こちらです。陛下』
マイナが血晶石を渡そうとした時だった。レッドダイヤモンドが、突然眩いぐらいに光だす。
『『『っ!?マイナ────』』』
息を呑んだ兄達が、心配そうに声を揃えて叫んだ。すぐさま駆け寄ってくるのが分かる。
一瞬で光が消えると、様々な形をした色とりどりの宝石が溢れ出す。
『えっ!?これは……』
『まぁ……』
『はぁー。オルゼオールの奴、こんなに取り込んでいたとは』
マイナは驚き、マノンは扇子を口元に当て、レイフィスは軽くため息を吐いた。
あまりの量に、両手で受け止められなかった宝石が、床へと転がっていく。
『まさか、これ……全部魔王石なの!?』
ユキは目を見開いた。見ただけでも大粒の宝石が、百個以上あるのが分かる。もしかしたら、千……あるいはそれ以上かもしれない。
スイやショウ、三つ子達も驚くと、目を細めた。
『ああ、そうだ。いろんな種族の魔王を倒しては吸収したのだろう……』
マイナは一つの血晶石に目を留める。燃えるように赤い蝶のレッドダイヤモンドに────。
『陛下、この血晶石をお借りしてもよろしいでしょうか?』
マイナは蝶の血晶石を見せると、レイフィスは全てを理解したようだった。
『それはラティーナの……あぁ、そういうことか。世界の命令だな?巫女としての仕事なら仕方あるまい。ラティーナの元に届けてあげてくれ』
微笑むレイフィスにマイナは頷く。
『はい、陛下』
レイフィスはマイナの頭を撫でると、少しだけ眉を寄せた。
『無理はしないように』
心配げに微笑むその眼差しは、とても優しい。
真祖の中でも一番強く、最初に生まれたレイフィスは、かつて────氷の王といわれ畏怖されていた。
それは今も変わらず、畏怖され続けている。
他の者がこの表情を見たなら、きっと驚くことだろう。




