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4-2音*.♪❀♪*゜ ー夢想曲ー

《君にはこれで十分だよ》


千年前のレイフィスの言葉が、オルゼオールの頭に木霊する。


『っ!レイフィスと同じことを!!』


脳裏に浮かぶのは、目の前にいる少女と同じ、闇を支配するかのような漆黒の髪────。


真祖の中でも特別な存在。


一番最初に生まれた誰よりも強いヴァンパイア。


オルゼオールは、レイフィスの記憶を振り払うかのように、全ての魔力を炎龍に注いでいく。


龍の体は黄色から白へと変わり、火の粉を散らす。

さらに、高温になったことが見て分かる。周りには、蜃気楼が揺らめいていた。


『なら、その状態で受け止めるがいい。できるのならなっ!』


白い炎龍は一直線に向かってくる。


『青龍。炎龍を消して』


マイナの言葉を合図に青龍も炎龍を止めるべく動き出す。真ん中で2匹の龍は、ぶつかり合った。


炎龍の一部が水で消えかかり、高温の熱で青龍の一部が蒸発し霧状になるが、物ともせず2匹とも体勢を整える。


炎龍が口から炎を吐くと青龍も水を吐き出す。どちらも譲らず同等だったが、マイナが青龍に魔力を少し込めると水の量が一気に増え、炎を上回り炎龍が消えた。


青龍は上空で一回りすると、ただの水に戻り姿を消す。水は雨となり、数秒だけ降り注いだ。


『っ!』


全ての魔力を込めた炎龍が消えたことにより、オルゼオールは雨に打たれながら、数秒間……言葉を失う。


水に濡れないよう、ユウは肩に掛けているマントでマイナを包んだ。


『なぜだっ!!』


オルゼオールは動揺を隠せずに叫んだ。


『嘘だ。ありえない……真祖であるこの俺が、たかだか純血の姫に……それも、力を封じている少女に負けるなど!』


ユウはオルゼオールを見やると、透き通る声で言う。


『魔法だけなら、マイナはすでに第四真祖マノン様を超えている』

『……なんだと?』


呆然としているオルゼオールは虚の目で、マイナの杖に目をやる。


『その宝石、第四真祖の……いや、違う……まさかっ!その杖の宝石はっっ!?ありえないっ……!』


行きついた答えにオルゼオールは瞠目する。



『幻の宝石。レッドダイヤモンド────』


マイナがそう呟くと宝石は妖しく輝く。

月に翳すと紋章が現れた。


『正真正銘、マイナの紋章が刻まれたレッドダイヤモンドだ。彼女自ら創り出した宝石だよ』


ユウは微笑む。その美しい微笑みに、オルゼオールはゾッとした。


『そ……ん、な……』


震えながら口を開くオルゼオールに、ユウは目を軽く 細めた。


『この意味が分からない訳ではないだろう?曲がりなりにも第六真祖なのだから』

『っ……認めない。……こんなこと、あってはいけない……!』


冷静さを失い取り乱すオルゼオールから黒い魔力のようなものが溢れ出す。それと同時に、顔には黒い蔦模様が浮かび上がっていく。


「これは……ユウ」


マイナは触れていたユウの服を無意識に掴む。

腰を抱いていたユウの手が、髪に触れた。その瞬間、さらに胸元へと抱き寄せられる。


緊迫した空気の中……マイナの耳にはユウの鼓動だけが響いた。


『やはり。其方、神の血をのんだな?』

「っ……!」


ユウの言葉にマイナは息を呑んだ。

ユウの腕から離れようとするが、ユウは離さない。


『ああ……とてもうまかった。神の血は。魔族とも人間とも違う。神というだけでどんなに弱くても甘美だ』


抱きしめられているユウの手に力が入るのを感じ、顔を上げようとするが叶わず、マイナはユウの服に顔を埋めたまま話を聞くしかなかった。


『お前も神だろ?それも上級あたりの。食ってやる。お前が抱いている姫と一緒にな』

『戯言を』


ユウは、少し低めの声で淡々と告げる。


そして────。

自らの手首を噛んだ。


ドクン────。


ユウの腕の中で、マイナは目を見開く。


ふいに香る────抗いがたい、かぐわしい香り……。


ユウの手首から零れ落ちる、極上の血がヴァンパイアの本能を呼び覚ます。


《ホシイ────。ユウ、ノ、血、ガ……スベテ……ホシイノ────》


マイナの心の奥底に眠る小さな少女が呟く────。


「…………」


小さく息を吐くと、マイナは静かに瞳を閉じた。

少女の声に気づかない振りをして……。


『ああ……うまそうな香りだ。お前もこの俺の、一部にしてやる!』


オルゼオールの足元から大きな黒い茨が飛び出す。


だが────眩しいほどの光が、茨を全て消し去った。


『貴様如きがユウに触れられるとでも』


ヨウがオルゼオールの前に立ちはだかり、2人は魔法や接近戦を駆使して戦う。



その様子を一瞥すると、ユウはマイナの耳元で囁いた。


『欲しい?』

「……ユウ?」


ふわりと香る、甘い香り────。


《ホシイ、ノ────》


無意識に零れ落ちる血を舐めとる。 


《タリナイ……》


マイナは潤んだ瞳でユウを見ると、ユウは優しく微笑んだ。美しい金の双眸は、密かに甘さを宿している。まるで、大切な宝物を抱くように。


『マイナ、好きなだけ飲むといい。君の渇きが癒えるまで』


ユウの柔らかな声音に、宝石のような真紅の瞳が強く輝き、マイナはユウに手を伸ばす────。背に腕を回すと、ユウはマイナを抱き留めた。互いの隙間を埋めるように……。


包むような温もりを感じながら、マイナはユウの首筋に顔を寄せた。


兄よりも甘い香りを放つ、ユウの血に意識が霞みそうになる。


真紅の瞳は一段と煌めき、真っ白な首筋に牙をたてた────。


口の中に零れ落ちる血の味は濃厚で、だけどすっきりとした上品な甘さが、口いっぱいに広がってくる。────飢えが満たされるまで……。




。❀·꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。。❀·̩͙꙳。




血を通してユウの神力が体に満ちるのを感じる。


心の奥底に存在する世界──── 童話のような薔薇園に沢山の桜。その中でも、一際大きな桜が湖の真ん中の陸地で咲き誇る。


ふわふわ舞い踊る桜は、尽きることなく悠久に降り注ぐ。この世界の全てに────。


桜の樹の上で腰掛けているユウは、マイナに気づくと人差し指を口元に当てた。

少女はユウの膝で密かに眠りにつく────。





飲み終わるとゆっくり、ユウから離れる。


『もういいの?』


ユウはマイナの唇にそっと触れる。

唇についた血が口紅と混ざり合う。


「ん……。ありがとう、大丈夫」


マイナはふわりと天使のような微笑みをユウに向ける。美しい金の瞳は優しげに目を伏せた。


『そう……。なら、あとはちゃちゃっと片付けるだけだね』


ユウはニコリと……どこか黒さを纏った柔らかな笑顔を浮かべ、オルゼオールに視線を移す。


マイナも振り返ると、空に施していた禁術魔法に魔力を込めた。


真紅の瞳は煌めき、胸元には杖のハート部分に似た模様が現れる。細やかな曲線で形作られたハートと蔦のようなデザイン。ハートの中心には小さな装飾のベル、両脇に翼が描かれ、上には桜の王冠とその中にダイヤモンドが印されていた。


桜色に輝くこの紋章は、マイナ個人を表す個人紋だ。

優美で幻想的な神秘さを宿しながらも、王族らしい威厳を放っている。


『我、純血の姫なり。我が身に宿りし血は王の証。我、イルヴェリーナ皇国第一皇女にして、第一王位継承者の名の下に、彼の者を封印せよ』


オルゼオールの足元と空に桜色の魔法陣が現れる。


『封印魔法か。そんなもの二度も効かぬ!』


オルゼオールは抜け出そうとするが、そこに空の魔法陣から光の柱が降り注ぐ。


『ぐっ!ああぁぁぁぁぁぁ、あ"あ"……はぁ……はぁ……』


光の柱が消えると、オルゼオールは笑いだす。


『ハハハハハ……やはり……効かぬ。効かぬぞ!ハ、ハ、ハ、ハ、ハ!』

『本当に?』


マイナはコテンと小首を傾げる。


『……なんだと?……ゔっ!……こ"れ"は……』


オルゼオールは自分に起きた衝撃に下を向く。

胸には剣が貫かれていた。


『ぐあ"ぁ……いづのま"に"ぃ……』


吐血を繰り返すオルゼオールは、痛みに耐えながら……後ろを振り向く。

背後に立っていたのは冷めた瞳をしたスイだった。


オルゼオールと目が合ったスイはニコリと微笑む。


「よくも私たちの前で……」


スイは真紅の瞳を細めると、低く呟く。


『妹を食おうなどと……言ってくれたね』


オルゼオールの胸から勢いよく剣を引き抜くと、スイは剣についた血を払う。


『ぐ、ぅ"ぅ……ごん、な"も"ので』

『第六真祖オルゼオール。第一真祖レイフィスの命により、汝を封印する』

『……封印だと?ハッ!くだらない!たとえ、お前たち純血種といえど、できるわけがないっ!!』

「そうかな?試してみないと、分からないだろう?」


スイの深い真紅の瞳が光を増し、闇夜に煌めく。


「マイナは僕たち兄弟が、ずっと守ってきた大切な姫だよ。未来永劫、護り続けると誓った。あの子が生まれる前から、ずっと……」


それに……とスイは続ける。


「二度もあの子たちに牙を向けた君を、僕は許すつもりはないよ。レイフィスの命がなければ、その魂ごと砕いていた」

『な……貴様ッ!!!』

「当然だろう……?可愛いあの子たちに、君みたいなものを近づけさせるわけないでしょ」


スイは頭を傾げ、ふわりと笑う。


傷口を抑えるオルゼオールの手の間からは、止まることなく、血が零れ落ちる。


『ッ……これくらいの傷で、本当に真祖を封じることができると思っているのかっ!?』

「そうやって、油断しているから気づかないのよ」


ユキが髪を靡かせながら歩いてくる。


『何をふざけたことを!こんな傷、すぐに……な"!』


オルゼオールは自分の胸に視線を向けるが、傷が塞がっていない事に愕然とする。何より体の端々が徐々に砂へと変わりだす。


『その剣、見た事があるぞ。そうだ!それは……いや、なんだ……?記憶が混濁して……まさか、さっきの封印はっ!?』


オルゼオールは、はっとする。

そして、マイナに視線を向けた。


「そう。私が貴方に施した封印は体ではなく、記憶よ」

「記憶が全て消える頃には、体は朽ち果てるわ」

「そして、新たな第六真祖が生まれる。貴方の記憶を継承せずに」


マイナ、ユキ、スイは淡々と告げる。そこにはなんの感情も含まれておらず────まるでただの美しい人形のようだった。


3人の言葉にオルゼオールは瞠目する。


『な、に?そんなことできるわけ……っ!この感じ、まさか!』


オルゼオールは足元の魔法陣を見る。魔力が抜ける感じに冷や汗が止まらない。


『そんなはず……ありえない。魔力のみならず、王気までも……!』


オルゼオールはある事に気づき周りを見渡す。


そこには、いつの間に現れたのかショウやヒヅキ、そしてユヅキとミヅキが立っていた。


『いつの間にっ……!?』


マイナは、魔法で狐のお面をパッと左手に出現させると、顔の近くまで持ってくる。


桜模様が描かれた狐のお面は、可愛らしく美しい。紐の部分についている鈴がリィン────となった。


それに気づいたオルゼオールは、ハッとする。


『その狐のお面……まさか!』


マイナの顔に狐のお面が重なると、オルゼオールは息を呑んだ。


そして、周りにいるスイたちをもう一度見ると、彼らもまた違う柄の狐のお面を持っていた。


『……っ。嘘だっ!そんなはず……お前たちが、あの時のっ!?』


オルゼオールの反応に、マイナは持っていた仮面を少し横にずらす。


天使のような微笑みを浮かべるマイナの姿に、オルゼオールはある記憶が蘇った。


7人の狐のお面をつけた子供たちを────。


『ありえない、ありえないっ!二度もお前たちにっ!!ぐっ……ゔあ"あ"ぁぁぁぁぁぁ………』


オルゼオールは叫ぶと頭を押さえる。急速に体が砂へと変わり、とうとう全てが砂へと変わった。


ドサァ────と地面に降り積もる。


一つの紅い宝石を除いて────。


マイナが右手を出すと血のように真っ赤な宝石が、手元にやってくる。


キラキラと輝く美しい宝石────。


月に翳すとより一層煌めいた。


『幻の宝石。レッドダイヤモンド────』


真祖だけが持つ特別な宝石。


宝石言葉は……。


────永遠の命。






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