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3音*.♪❀♪*゜ ー詠嘆曲ー

『我に課せられし封印を、今こそ解き放て』


そう呟いた途端、周囲にざぁと風が吹きあれ────胸まである艶やかな美しい黒髪が、風によって桜の花びらと共に、ふわりとなびく。


瞳は茶色から真紅に染まり────ハートをモチーフにした金色に輝く金の鍵のネックレスも、胸元で小さく揺れ、眩いくらいに輝きを増す。


マイナの周りを桜の花と花びらが舞い、姿を隠すように包みこむ。


すると、ガーリーな白いレースのフリルワンピースから、落ち着いた赤を基調にしたワンピースドレスへと変わった。


ゴシックな雰囲気で、可愛さとシックが混じった魔法使いの服装だ。

スカート部分には、金色に縁取られた大小の桜色をした桜の花模様が、散りばめられている。


そして、首にさげていた金色の鍵が、チェーンからはずれ、そのまま大きくなった。

マイナの身長とほぼ同じ大きさの杖に変わる。


杖を握ると、包んでいた桜吹雪の球体が、宙に弾けて……消えていく。


魔力の封印をほんの一部解いたマイナは、さっきよりも濃い魔力を纏っていた。


マイナが歌いだすと、優美でいてどこか儚い夜桜が、淡く光りだす。

花びらも同様で、傍から見ると、まるで────光の粒が空から降り注いでいるかのよう。


その様子を、ユウは煌めく金の瞳に映す。


足元には大きな魔法陣が現れ、それにつづき次々と地面や空中にも、沢山の魔法陣が現れた。

様々な色合いで、光り輝く魔法陣は夜に映え、とても美しく幻想的だ────。


複数の魔法陣は、あちこちに封じられていた精霊達を、解き放つと同時に静かに消えていく。


解放された精霊達は、踊ったり飛んだり……光の球体になって、ぐるぐる回ったりと宴会モードだ。


(それにしても、切りがない)


浄化しても、また新たに黒い花々が、至る所に咲きはじめる。


繰り返しそのまま浄化を続けながら、封印を解除していると────ほんの一瞬だったが、知っている人物の魔力を感じとった。


(この魔力は……)


流れてくる魔力の方向に、2人は視線を移す。


「以前と……随分、魔力が変わったようだね、彼は……。オルゼオールに勝つと言いながら、一体何をやっているのかな。……まったく、仕方ないね」


ユウは軽くため息をつく。マイナはユウの言葉に苦笑せざるを得なかった。


『それにしても、さすがに数が多い』


ユウは少し困ったような表情で微笑む。


マイナは瞼を閉じると、より鮮明に禍々しい気配を纏った敵を感じ、呆れを通り越して感心した。


(予想通り来るとは思っていたけど、こんなに……。軽く千以上はいる。それに、自分の配下だけじゃない。よくこれだけ……監視の目を掻い潜って、違法ヴァンパイアを……。しかも、天使もいる?随分禍々しいけど)


歌いながら考えていると、突然横から声が聞こえてきた。


「やはり貴方でしたか。あり得ないぐらいの速さで浄化と封印を解除しているのは」


目の前に現れたのは、金髪碧眼のヴァンパイア。


見覚えのある執事服を着た、一人の青年が現れた。


「我が君から伝言です。今すぐここから去るなら、手だしはしない。とのことです」


(このヴァンパイア、前よりも強くなってる。華族なのに純血種並みの気配を纏うなんて……でも)


マイナは一旦歌うのをやめた。だが、浄化も封印の解除も止まることなく続いている。


「悪いけど、お断りするわ」


そう淡々と言うと、青年は軽く目を細めた。


「そうですか。私としても貴方にはここから去って頂きたかったのですが……残念です」


青年が動きだすと、マイナを囲っていたヴァンパイアと空中で待機していた天使が、襲いかかってくる。


マイナは目を閉じると敵の位置を再確認し────そしてゆっくりと瞳を開く。


煌めく真紅の瞳は神秘的な輝きを放ち、敵を見据える。


「なっ。この気配はっ!!」

「もう、遅い」

「あ゛ッ!……な゛、ぜ……?」


────すると、瞬く間に青年以外のヴァンパイアは、砂へと変わる。


青年の身体は、縫い付けられたように地面から動けず、跪く。心臓に激しい痛みが走り、口からうめき声を漏らす。


「ゔッ……てん、し……達よ゛ッ……」

「無駄だよ?」

「な゛……そんな」


青年は空を見上げると、目を見開く。


黒い霧を纏った意思なき天使の足元には、魔法陣が描かれていた。そこから、身体や翼に蔦が巻きつく。


巻きつかれた複数の天使はその場から動けず、蕾だった薔薇の花が開くと、白く光ながら天使は弾けた。


光の粒子が、キラキラと大地に降り注ぐ。


(このまま一気に片付けちゃおう)


マイナが歌を紡ぐと、残っていた敵が成す術もなく、一気に薄く色づく桜の花びらへと変わり、大地に散る。


「あ、あなたは……いえ、貴方様は、純血の君……なの、ですか……?」


青年は信じられないものを見るような目で、マイナを見た。それもそのはず、マイナは純血種の気配を抑え、華族ヴァンパイアだと思わせていた。


「気づいたところで、何も変わらない」


冷や汗をかいてる青年を見つめ、微笑む。


マイナの真紅の瞳が妖しく光りだすと、神秘的なその瞳から、青年は目が離せない。


そして────この後に続く言葉に、従う他なかった。


『汝に告げる。汝の主を倒しなさい』

「ッ!……はい、仰せのままに。我が君」


青年の目は虚になり、跪いたまま頭を下げる。

そして立ち上がると、姿を消した。


『マイナ────。いつ見ても、君の魔法は素晴らしいね。無詠唱で、複数の魔法を同時に発動させるとは。あの量の魔法を扱えるのは、君ぐらいじゃない?』


背後から聞き慣れた、美しい声が聞こえてきた。振り向くと、ユウが微笑みながら近づいてくる。


『この間破壊した世界も、一瞬で花びらとなって、可愛らしく散っていったし……。マイナはいつも美しい魔法を使うね』


ユウはどこか嬉しそうに、目を細める。


『いや。普通こんなエンターテイメントに優れた攻撃魔法、存在しないだろ……?しかも魔法の威力凄まじいし……怖すぎる……』


ヨウはなんとも言えない表情で、静かに空から降りてきた。


「どうせなら綺麗な方がいいでしょ?」


マイナが微笑むと、ヨウは腰に手を当て、ため息をつく。それを見たユウが苦笑した。




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