11音*.♪❀♪*゜ 太陽と月のお城
桜舞う学園の門を、兄達と一緒にマイナはくぐる。
その瞬間────驚きと喜びに満ちた歓声が、すぐさま広がった。
「キャーーーーーーー!!!!!」
「えっ!?嘘でしょ??」
「まさか、本物なのっ?!ていうか……ここにいるってことは……」
「Mudiaのセンター、マイナがヴァンパイア!?」
「それなら、お兄さん達も!?────アイドル界の王者、CROWNのスイとユキも────スポーツ万能、モデルのショウや絶大な人気を誇るロックバンド────黒兎の三つ子、ヒヅキとユズキにミヅキもヴァンパイアってこと────!?」
黄色い声援が上がりながらも騒然とし、一瞬で生徒に囲まれる。
「マイナ様〜!!今日もかわいー!!!こっち向いて〜!」
「スイ様!!ステキ〜!まるで絵本から飛び出してきた王子様みたい!理想の王子様そのものだわぁぁぁ!!!」
「ユキ様〜!!あぁ……ダメ!麗しすぎて直視できないぃぃぃぃ!!」
「ってか!カミノ家兄妹全員で登校とか、眼福!!写真撮らなきゃぁぁぁ!!!!」
「ショウ様ぁぁぁ!!美しい筋肉をぜひカメラに〜!」
「ヒヅキ様、ユヅキ様、ミヅキ様!!目線こっち〜!!!」
スマホのカメラを構えながら、生徒たちは写真を撮っていく。
身動きできない状態に、内心少し困りながらも沢山のファンが、この学園にもいることに嬉しく感じ、マイナはふわりと優しく微笑んだ。
すると男女関係なく、歓声が響きわたった────。
「キャーーーーーーー!!!!!」
「マイナ様が微笑んだわぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「かわいーーーーー!!!!!」
スマホのシャッター音が響く中、ヒヅキがファンに声をかけた。
「おい。その写真、後で俺のSNSのDMに送ってくれ」
ヒヅキが少し口角を上げると、シャッター音が一瞬止まり、再び連続撮影の音が聞こえる。
そして生徒たちは、声を揃えて笑顔で頷いた。
「「「お任せを!!!!」」」」
「楽しみにしている」
ヒヅキがフッと笑った瞬間、女生徒は鼻を押さえて、数人地面に倒れ込んだ。
「ちょっと!ずるいわよヒヅキ!私にも送って頂戴」
ユキはヒヅキの腕を掴み、力を込めた。
顔色を変えることなく、ヒヅキは凍てつくような絶対零度の瞳で、ユキを見る────が、ユキは気にすることなく、ニコリと笑う。
『送って、くれるでしょ?』
有無を言わさない笑顔に、ため息が出そうになる────その途端、背筋に冷たい何かが走った。
「っ!?」
振り返ると────。
「もちろん、僕にもくれるよね?ヒヅキ……?」
スイが柔らかな微笑みを浮かべながら、小首を傾げた。
ユキの比にはならない……逆らえない圧がスイから放たれる。
思わずヒヅキは右手で顔を抑えると、ため息をついた。
「……写真、ちょうだい……ヒヅキ」
「僕にも送ってね」
ヒヅキの袖口を掴んだ、ユヅキがじっと見つめ、その後ろからミヅキもヒヅキに頼んだ。
「……言われなくたって、送るよ」
ヒヅキはユヅキの頭にポンッと軽く掌を乗せて撫でると、三つ子は笑い合う。
その姿に、またシャッター音が激しく鳴る。
「私もお兄様たちの写真欲しい!みなさん良かったら私のDMにも送ってくれると嬉しいです」
マイナがニコッと笑うと、カメラを構えた生徒達は鼻から血を垂らしながら、親指を立てる。
「「「もちろん!!」」」
笑顔で声を揃える生徒達は、次々に地面へと崩れ落ちていく。
「「「尊いっ!!!!この兄妹尊いすぎるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!」」」
一斉に生徒達は悶え始め、震えていた。
「みんな、楽しそうな人たちで良かったね」
スイはクスリと笑うが、ヒヅキは呆れたように呟く。
「スイにぃ……」
「でも流石にこのままだと、入学式に間に合わないね」
スイは困ったように苦笑すると、軽く右手を振った。すると、生徒達は一瞬で静かになる────。
そして、何事もなかったかのように立ち上がると、歩き出した。
スイによって、生徒達は認識阻害の魔法をかけられたのだ。
その為、認識していても普通の生徒だと思い込んでいる生徒達は、さっきまで夢中になっていたアイドルの存在に気づくことなく、横を通り過ぎて行く。
「お兄様。認識阻害、かけ続けるの?これからずっと」
マイナの問いにスイは首を軽く振ると、微笑んだ。
「いや、今だけだよ。彼らには、既に契約魔法を交わしてもらっているから」
「そう」
契約魔法────。
魔法で交わされた契約は、絶対であり決して破ることはできない。
真神学園に入学する生徒は、事前に契約魔法を交わされる。
一つ、桜歌皇国や真神学園の存在を人間に漏らさないこと。
二つ、人間界で活動している者もいる為、生徒や桜歌皇国にいる者が、ヴァンパイアであることを誰にも漏らさないこと。
三つ、ヴァンパイアについて、人間に漏らさないこと。
この契約があるからこそ、人間界で活動しているヴァンパイア達は安心して通うことができるのだ。
校舎に入る寸前、スイとユキそしてショウが足を止めた。
「僕たちはこっちだから、またあとでね」
スイは右手で空を指し示す。澄み渡った綺麗な青空には、大きなお城が浮かんでいた。
真神学園と似た、美しい白亜のお城────。
高校と大学は、それぞれ違う校舎で学ぶのである。
「私たち大学生は、空の上なのよね」
「空に浮かぶ学校だなんて、ワクワクするな!」
ユキとショウは空中にある、校舎を見上げる。
「そういえばお城、見た目似てるけど……少しデザインが違うんだよね?」
ミヅキも、空に浮かぶお城を見ながら呟いた。
「そうだよ。一応両方とも春とファンタジーなイメージだから、金細工に桜や薔薇とか入れてあるの」
「さくら……入学式のイメージか?」
「正解!」
マイナの言葉に、ヒヅキが気づき答える。正しくイメージの意味を汲み取ったヒヅキの答えに、マイナは嬉しそうに微笑んだ。
「地上に建っている、高校生が通う真神学園は、おとぎ話に出てくるような、メルヘンなお城なの。幻想的な可愛らしいデザインをイメージしてるんだよ。だから桜や薔薇、蔦とかの植物や、兎に狐、他にも蝶などの、金の装飾が施されているの」
マイナは、外壁に細工してある金細工を差しながら説明すると、「因みに、ユニコーンとかもいるよ!」と付け加える。
「そして天空に浮かぶお城、大学生が通う真神学園大学は、洗練された品位が漂う高貴なお城なんだよ。
エレガントで神秘的なイメージのデザインになっているの。金細工は同じ桜や薔薇、蔦とかの植物と、コウモリや鳥、星と魔法陣が施されているんだ〜。あと、宝石も散りばめてあるんだよ」
「なるほどね〜」
「なるほどなぁ」
「……ん?ほうせき……宝石!?」
マイナが微笑むと、ミヅキとショウは興味深そうにお城を見る。だが、最後に説明された宝石について理解が追いつくと、ミヅキは驚いた。
「魔法石だよ」
「すごいのは、宝石だけではないわよ!空に浮いている、あの島!実は島がなくてもちゃーんとお城は浮くし、周りに浮いている小島にも、いろいろ仕掛けがあるのよ!ワクワク!ドキドキよ!」
マイナは柔らかな微笑みを浮かべると、ユキがニコリと笑う。
「それともう一つポイントがあるんだよね!お兄様」
「えぇ!」
マイナがユキの方に視線を写してニコっと微笑むと、ユキは頷いた。
「学園は太陽の模様が、大学は月の模様の金細工が装飾されているんだよ〜!」
「表と裏、表裏一体なのよね〜!」
マイナとユキは手を合わせて、笑い合う。
「まさに、この学園らしいね」
優しく微笑むスイは、学園を見上げる。
学園の真ん中────金の太陽が、陽の光を浴びて輝いていた。




