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6音*.♪❀♪*゜ 聖獣

世界の主によって開かれた、夢の海へと通じる空間が小さくなっていく。完全に閉じる間際、白兎がぴょんっと穴から出てきた。


『どうだったの、天……?』


ガゼボの東側。春の花々が咲き誇る。

桜にカスミソウ、薔薇に赤いカーネーションなどなど。その間から出てきた黒兎が、真っ赤な瞳で白兎を見つめた。


『天奈。……恐らく封印が解けるのも時間の問題だ。目覚めかけている』

『本当?!』


天奈と呼ばれた黒兎は、パァーと周りに花が咲き誇るかの様な笑顔を浮かべる。


『あぁ……。四年……やっとあの子に会える。この時をどれくらい待ち望んだの』

『そうだね』


涙目の天奈に天は寄り添い、頬を擦り寄せ涙を拭く。

そして、額同士を合わせた。額には、桜色の五つの花弁が描かれている。重なった桜模様は、微かに光り輝いた。


『もうすぐ全てを思い出す────』


天は瞳を閉じる。脳裏に浮かぶのは、幼かった少女との思い出。


『早く会いたいわ。そして、沢山抱きしめるの。会えなかった分、沢山、沢山……側にいて、今度こそずっと一緒にいるわ。マイナ────』

『そうだね。今度こそ側に、絶対に護るんだ。害する全てのものから護るのが僕達の役目。僕達はマイナの神獣であり聖獣だからね』


ゆっくりと瞳を開けた天は微笑んだ────。





『だが……早すぎないか……?』

『獅天?』


白いライオンの呟きに、白鹿は隣に視線を向ける。

寝そべっていた獅子は起き上がると、人型に変わった。そして、ガゼボの椅子へ座ると頬杖をつく。


波打った白い髪は椅子へと垂れ、ハムスターの天宣(ての)に齧られている。


天香も鹿から人へと変わると、獅天の側まで歩く。


『マイナと世界の共鳴力は並外れている。相性がいいせいか、万物と繋がってしまった』

『だが、あの時は……』

『ああ。ああするしかなかった、仕方ない』


天香の言葉に獅天は頷く。


『だが、一度繋がってしまった以上、共鳴しやすくなっている筈だ。世界の主も一瞬とはいえ、呑まれかけた。もしまた繋がってしまったら……』

『なら、そうならないようにすればいい』


突然現れた青年に獅天は眉を寄せる。


『……天狼』


天狼と呼ばれた青年は、真っ直ぐと獅天を見据えた。

月のような金の瞳からは何も読み取れず、獅天は困惑する。


二人の視線が交わる中、静寂を破るように陽気な声が聞こえてきた。


『ハロー♪僕もいるよー』

『私もいますよ』


天狼の背後から、二人の青年が左右に顔を出す。


獅天のようにウェーブがかった髪を長く伸ばした、赤い髪の青年、赤天は満面の笑みで手を振る。


一方、紫のチャイナ服を着た青年……紫天(しあん)はニコニコと笑ってはいるが、天狼と同じく表情が読めない。

白い髪を三つ編みにし、左胸へと垂らしている紫天は、手が隠れるほどの長い袖で口元に当てている。


(やっかいなのが来た……)


こめかみに手を当て目を瞑った獅天に、紫天の声が降る。


『今……』


目を開けると…… 紫天の整った顔が間近にあった。

あまりの近さに言葉を失っていると、紫天が口を開く。


『やっかいなのが来たって、思ったでしょ〜♪』

『…………』


低い声から途中、ふざけたような明るいトーンへと変わる紫天に、獅天は眉根を押さえると、ため息をついた。にこやかに笑ってはいるが、紫天の瞳は冷たい。


『あの時は、側に殿下方がいた。それに天兎(まう)達もだ』


獅天は天と天奈に視線を移す。そしてまた天狼へと戻すと目を細めた。


『万物を御することは、神皇や魔王、世界の主でさえ難しい。その彼らも御するのではなく、一部に干渉するのみだ。たった16歳の少女が万物を御するなど、無に等しい。もし成功したとしても、最悪……今の人格が消滅する可能性だってあるんだぞ……?』

『何の為に我らがいる?』

『なに……?』

『マイナは、真天のヴァンパイアだ。万物を制御することなど、造作もない』

『それはそうだが、天狼……忘れたのか?真天の力は、今は封じられ、純血の力しか使えない』

『お前こそ、忘れたのか?万物を操る真天を、完全に封じることはできない。現に力が漏れでている。故に危険が迫った時、無意識だが咄嗟にその力を使用していた。真天の力に封印が耐えきれず、このままだと解けてしまうだろう。だが……聖獣である我らなら、マイナに血を与えることができる』

『それが、なんにな……まさか……!?』


獅天はハッと目を見張る。


『そうだ。解ける前に、我らで9つの封印を解く。

このまま解けてしまえば一気に解放され、強大な力が目覚める。そうなれば、身体に負担がかかるうえに、それこそ自我を保てなくなる可能性がでてくる』


そこまで言い終わると、天狼は腕を組みながら柱に寄りかかる。


『確かにな……我らで封印を解くのは賛成だ。どのみち……漏れだした力を使えば、一瞬だが真天の気配が漂う。そうなれば、いくら真天のヴァンパイアが伝説の存在とはいえ……隠し通せない。実際に……人数は少ないが、狙われた時もあった……。そのことを考えると、目覚めさせた方がいいだろう。徐々に封印を解いた方が、負担なく目覚める。だが、問題は……マイナが自分の中に封じた、あの方の力が浄化されているかどうかだ。本来ならあと一年、かかるはずだったのだが……』

『それは、大丈夫だろう。浄化が終わってなくても、堕神の力は弱まっているはずだ。むしろ、問題は真天のヴァンパイアの存在を隠し通すことだろう……。我らの血で、徐々に封印を解けば……真天の力が強まり、気づかれる可能性がでてくるはずだ』

『ああ、そうだな……。真天のヴァンパイアなんて今まで存在したことがない。伝説だと思われていた存在がいれば、狙ってくるだろうな。力を取り込み、己のものにしようとする、愚か者が……』


獅天は、そう言うと目を閉じた。


『だが、我らが護れば心配はないだろう』

『そうだな』


天狼は獅天の言葉に頷く。そして、そのまま話しを続ける。


『どのみち、他の者がなることはない。真天のヴァンパイアになる条件は、最も強い力を秘めている神と魔、そして世界と聖獣の4つの血だ。集めることは、不可能に近い』


二人の会話を聞いていた天香は、顎に手を当てて呟いた。


『なるほど……。今まで存在しなかったのは、なり方を知っていても、血を集めることができなかったから……なのですね』

『そーゆーこと〜♪』


紫天はおちゃらけたように言い、天狼は静かに頷いた。


『マイナは最初の真天のヴァンパイアとなり、祖となる者だ。桜の巫女は、大いなる巫女、万物の巫女でもあるのだ。そうだろう?……世界の主よ』


世界の主はいつものように微笑んだまま、柔らかな声で話す。


『そうだね。天狼の言う通り……マイナはもう既に一度、万物の巫女として目覚めている。これからの為にも、真天の力を得た方がいい』


世界の主の言葉に天狼は小さく頷く。すると、紫天の楽しそうな声が聞こえる。


『楽しみだなぁ〜♪マイナに会えるのっ♪』


喜ぶ紫天に、天狼は視線を向けると尋ねる。


『紫天。其方、マイナに何かつけているか?』

天紫(てんき)をつけているよ♪まだ幼いけど、天蛇(てんじゃ)の中では割と強いからね』


笑いながら目を細めた紫天とは真逆に、変わらず感情のない表情で天狼は静かに話し出す。


『そうか。……天、天奈、天桜狐(あざね)。其方達も引き続き、一緒に見守るといい。何かあった時、四人いた方が安心だ。何より封印が解けて記憶が戻ったなら、一番最初に其方達に会いたいだろう』


珍しく口角を上げ、微笑んだ天狼に皆……軽く目を見張る。


天と天奈は花が咲き誇るかのように喜び、顔には出さないが、天桜狐と呼ばれた雪のように真っ白な狐は、尻尾を左右に振っている。


(((マイナ────待ってて、今行くから)))


彼らの嬉しそうな姿に皆、いつの間にか微笑んでいた。




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