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小説と俺たち
ミキオは涙ぐんでいた。
かといって誰かに嫌なことをされたわけではない。
悲しいことが起きたわけではない。
ミキオの読んでいる小説の展開に泣いていたのだ。
「ミキオ、その小説そんなに泣けるの?」
カズが聞いてきた。
「うん、これ、泣けるってネットで話題なんだよ」
ミキオが涙声で言った。
「特に先輩と後輩の別れのシーン。最後に2人で焼肉を食べに行くシーンがいいんだよな~」
「それ、泣けるの?」
カズがちょっと戸惑った。
「泣けるよ!今思い出しても泣けてくるよ…」
ミキオはまた涙を拭った。
「ミキオ、この小説も泣けるぜ」
タクローが本をミキオに差し出してきた。
「こ、これは、『世界のど真ん中で恋を叫ぶ』!」
「そう、『セカ恋』だよ」
タクローはどこか自信満々だ。
「それ、いいよな!特に最後らへんの空港で叫ぶシーンいいよな!」
ミキオも熱を帯びてきた。
「分かる?あの『助けて下さい』って言うシーン!スゴイいい!」
ミキオとタクローは小説談義で盛り上がっている。
カズは1人取り残され、誰かに助けて欲しい気持ちだった。




