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バレンタインと俺たち①
「…これでよし」
立花は家でチョコを手作りしていた。
チョコを箱に入れ、綺麗な紙に包んでリボンを結ぶ。
「…喜んでくれるかな」
立花はそっと呟いた。
「タクロー、カズ、おはよう」
ミキオが教室に入ってきて、挨拶をした。
「ミキオ、今日はバレンタインだな」
タクローが言う。
「あぁ。でも、俺らみたいなんはチョコはもらえねぇよ」
ミキオがカバンを机に置く。
「そうだよな。彼女なんて生まれてからできたことねぇしな」
カズが笑う。
「そうだよ。だから俺はバレンタインは興味ないフリしてるんだよ」
ミキオが組んだ腕を後ろに回した。
「嘘つけよ。ホントは興味あるんじゃねぇの?」
カズがからかう。
「おい、カズ、やめろよ」
ミキオもじゃれる。
その様子を立花がジッと見つめていた。
ーーー台東くん、バレンタインに興味ないのーーー?
思わず紙袋を見る。中には手作りのチョコが入っている。
立花はミキオ達に気づかれないように、そっと自分の席に座った。




