魚を捌く俺たち
「ミキオ、何を見ているんだ?」
スマホをじっと見ているミキオに、カズが話しかけた。
「魚を捌く動画」
ミキオが答えた。
「え?魚?」
カズが戸惑いながら言った。
「うん。これ、結構見てるとすごいんだよ」
ミキオが画面を見せた。
そこにはまな板の上に乗っている魚が写し出されていて、その魚を人が実に丁寧に捌いていく。
「ごめん。これの何がいいかさっぱり分からないよ」
カズはうなだれた。
「でも、魚がこうして三枚おろしになる様子なんか見てて気持ちよくない?」
ミキオが力説する。
「いや、気持ちいいって・・・」
カズがそう言うと、
「おはよう」
とタクローが入ってきた。
「タクロー、ミキオが魚を捌く動画を見ているんだけど、どう?」
カズはタクローに言った。
「え?」
「ほら、これだよ」
ミキオはタクローにも画面を見せた。
「あ、俺これ毎日見てるよ」
「毎日?」
タクローの告白にカズがツッコむ。
「この三枚おろしにする所がいいんだよな」
「わかるわかる」
ミキオとタクローはスマホを見ながら話し合っている。
「何これ・・・?俺が遅れてるの・・・?」
カズは目の前が真っ暗になった。
ミキオとタクローはまだ話し込んでいた。




