さくらと俺たち
大沢さくら。
大沢拓朗ことタクローの妹で、中学2年の女の子である。
性格は控えめ。でも、友達が多くもなければ少なくもない。
成績もひどくもないし、良くもない。
どこにでもいる普通の中学生だ。
お兄ちゃんも好きだし、家族も大好き。
ごく普通の中学生である。
ただ1つ、他と違っていたのは…。
「お邪魔します」
ミキオとカズはタクローの家に上がりこんだ。
今日も、タクローの家で宿題をする予定だ。
「どうぞ」
さくらがお茶をテーブルに運ぶ。
「さくらちゃん、いつもありがとう」
ミキオがお礼を言う。
「ど、どういたしまして」
さくらは遠慮がちにその場を後にした。
「さくらちゃんってホントにいい娘だよね」
カズが言った。
「そうか?家では結構生意気だぞ」
タクローがそういうと、さくらはタクローの肩をバンと叩いた。
「ほ、ほら、今叩いた!」
タクローはさくらに叩かれた所を指さした。
「ははは、バチが当たったんだ」
ミキオが笑った。
「さくらちゃんは優しいよ。こうしていつもお茶を運んでくれるし」
カズが言った。
さくらは一瞬立ち止まったが、すぐに自分の部屋に戻った。
「…や、『優しい』だって…」
自分の部屋に戻ったさくらは、真っ赤になった顔を手で隠しながら、その場に座りこんだ。
そう。さくらはカズのことが好きなのだ。
さっきは真っ赤になった顔をカズに見られたくなかったからである。
「…ホントに…、カズさんっていい人だな…」
さくらは呟くように言った。




