おでんと俺たち
「なんか、こんなに寒いとおでんが食べたくなってくるな~」
学校の帰り道、ミキオはふとそんなことを言った。
季節はすっかり秋になって、北風もかなり冷たくなってきた。
「あぁ、おでんか。いいね」
カズがのってきた。
「俺、大根がいいな。スゴい煮こまれている大根」
「いいね」
「玉子もいいよね。黄身をおつゆに溶かしたりしてさ」
ミキオとカズが盛り上がっている中、
「おでんって、ご飯のおかずになる?」
とタクローが言った。
「え?ご飯のおかず?」
ミキオとカズがタクローの方を向いた。
「うちの母さんは、『おでんはおかずにならない』って言ってるんだけど、ミキオとカズはどう思う?」
「うーん、俺はギリなるかな」
ミキオは首をひねりながら言った。
「俺もギリなるかな」
カズも言った。
「俺はならないんだよ。出汁も結構甘めだから、あまりご飯に合わないと思うんだよね」
タクローが言った。
「いや、練り物とかはなるでしょ」
ミキオが言うと、
「いや、意外とならないんだよ」
「いや、結構旨味があるからなるんだよね」
「いや、ならない」
今度はミキオとタクローが盛り上がってきた。
カズはますますおでんが食べたくなってきていた。




