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なるとと俺たち
「なるとってあるじゃん?」
カズが突然言った。
「うん、あるね」
ミキオが相槌を打つ。
「あれって、ほとんど料理に使われていないじゃん?」
「確かにラーメンぐらいだもんね」
タクローがうなずく。
「でも、なるとってすごいうまいじゃん」
「うん、まぁね」
「もっと他に使い道ないのかな」
カズはそこで頭を抱える。
「ま、まぁ、たまに茶碗蒸しに入ってるよね」
「それぐらいだろ。でさ、俺、考えたんだけどさ…」
カズがそこで間を置き、
「なるとってほとんど魚肉ソーセージじゃん」
と言った。
「いや、違うと思うよ…」
ミキオがそう言うと、
「いや、魚肉ソーセージも魚のすり身で作られるだろ。なるとも魚のすり身で作られるだろ。ほぼ一緒じゃん」
とカズが力説する。
「ということは、魚肉ソーセージが入っている料理には、なるとが使えるってことじゃん」
とカズが言った。
しばらく沈黙が流れる。
気まずい沈黙だった。
「お、そろそろ授業だ。またな」
カズは自分の席に戻る。
「…煙に巻かれたな」
「…なるとだけに」
ミキオとタクローの間にまた気まずい沈黙が流れた。




