ダムと俺たち
ミキオ達はダムを見に来ていた。
「なぁミキオ、なんでダムを見に来てんだ?」
カズがミキオに聞く。
「俺、最近ダムが好きなんだ」
ミキオが言った。
「へぇ、そうなんだ」
カズが言った。
ミキオはそこで一呼吸置くと、
「滝とダム、どっちが好き?」
とカズが聞いた。
「…どっちもそんなに…」
とカズが言った。
「…どっちが選ばなきゃいけないとしたら?」
ミキオは再度カズに聞いた。
「…どっちがって言ったら、滝かなぁ…」
カズが答える。
「なんで滝が好きなの?」
「滝の方が水の勢いがスゴいし、何より癒されるじゃん」
カズがそう言った。
「俺は断然ダムだな」
ミキオが言った。
「え?なんで?」
「ダムって、いつもは水をせき止められてるだろ?」
「まぁ、水を貯めなくちゃいけないからね」
「それが、『放水』っていって、水を放出する瞬間があるんだ」
「へぇ、そうなんだ」
「その時の水はなんか、自由になった感じがして生き生きしてるんだよな」
ミキオは話に熱が入ってきた。
「今まで押さえつけられた分、水がなんか解き放たれたような感じがするというか、なんというか嬉しそうなんだよな、わかる?」
「全然分からない」
カズがそう言うと、ダムの方に視線を移した。
「シャットダウンだな」
タクローがミキオに言った。
「うるさい」
とミキオも視線を感じダムに移した。




