声優と俺たち
「ふわぁ…」
ミキオがあくびをしながら教室に入ってきた。
「おはよう、ミキオ。また夜ふかしか?」
タクローが声をかける。
「おはよう。あぁ、そうなんだよ」
「なんで夜ふかししたの?」
「昨日、アニメ観すぎてさ」
ミキオが目をこする。
「録画すればいいんだよ。そんなに夜ふかししたら体に悪いよ」
タクローが言う。
「お前は俺の母親か」
ミキオが言う。
「いやさ、昨日アニメ見てたら聞いたことのない声の声優さんが出ていてさ」
「うん」
カズが相槌を打つ。
「『この声優さん誰かな?』って思ってエンドロール見てたら、知ってる声優さんでなんかスゲェなってなって」
「あぁ、あるよね」
「それで、その声優さんの出てるアニメが見たくなってさ、片っ端からアニメを見ていたわけ」
「あぁ、止まらなくなっちゃうやつだ」
カズが不思議と話についていっている。
「俺もたまにあるんだよ。『この声はこの人だな』って思ってたら、全く違う人だったりさ」
「わかる!」
ミキオとカズのアニメ談義が熱を帯びてきた。
「なぁ、そろそろホームルームだから席に着こう」
タクローが2人を促す。
しかし、2人はアニメ談義に夢中で話を聞いていない。
俺の声は届いていないのかーーー。
タクローはがっくりきた。
「こら、話してないで席に着きなさい」
ミキオとカズは先生に怒られた。
ミキオはタクローの方を見る。
タクローは聞こえないフリをして座っていた。




