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いい匂いと俺たち
「この消しゴム、いい匂いするな」
ミキオが消しゴムを嗅いで言った。
「でしょ。勢いで買っちゃったけどなかなか気に入ってるんだよ」
カズが言う。
「あぁ、なんかずっと嗅いでいたいな…」
ミキオはうっとりしている。
「そんなに気にいったの?」
タクローが聞く。
「なんか嗅いでいるとすごい落ち着くんだよ。タクローも嗅いでみてよ」
ミキオがタクローに消しゴムを差し出す。
タクローは、消しゴムの匂いを嗅いでみる。
「あぁ…、確かに…。すごいいい匂いがする…」
タクローはうっとりしている。
「すごいいい匂いがするだろ。なんか日々の疲れが一気に取れるような気がするだろ?」
ミキオがそう言うと、
「ホントだ。日々の力が取れていくような気がする」
とタクローが同調した。
「あぁ、ずっと嗅いでいたい…」
「ホントだな…」
うっとりしている2人を横目に、
「それ、俺の消しゴムなんだけどな…」
とカズが言った。




