マヨラーと俺たち
「この間、同じクラスのヤツと飯食ったんだけどさ」
帰り道、ミキオが切り出した。
「そいつがいわゆるマヨラーでさ、いつもこんぐらいのサイズのマヨネーズを持ち歩いてるんだよ」
「へぇ」
タクローが相槌を打つ。
「そいつがとにかくなんでもマヨネーズかけるんだよ。その時は焼肉に行ったんだけど、焼肉全部にマヨネーズをかけてさ」
「でも、なんか合いそう」
カズが同調した。
「いや、それだけだったらまだいいんだよ。そいつはご飯にもマヨネーズをかけたんだよ」
「え、ご飯にも」
カズもさすがに表情が曇った。
「さすがにこれは俺もドン引きしてさ。だから、『いつもこんなにマヨネーズかけるの?』って聞いたんだよ」
「うん」
「そうしたら、『結構何にでもかけるよ』って言ったんだ。だから俺は、『何にかけるんだ?』って聞いたんだ」
「そしたら?」
「『トンカツとかにもかけるし、天ぷらにもかける。炒め物とか焼き魚とかにもかける』って」
「普通に美味そうだな」
タクローが興味を示した。
「これが美味そう?タクロー、マジかよ?」
ミキオが驚いた顔でタクローを見る。
「うん、有り得なくはないかなって」
タクローが微笑む。
「タクロー、そいつは『味噌汁にもマヨネーズを入れる』と言っていたぞ」
ミキオがそう言うと、しばらく沈黙があってから、
「…そ、それはちょっと…」
とタクローが目を逸らしながら言った。
「さすがのタクローも言葉を失ったか…」
カズがあわれむような目でタクローを見た。
「どうしよう、かける言葉が見つからない…」
「マヨネーズだけに…」
3人は無言のまま、それぞれの家に帰っていった。




