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外伝 ヴァン・クラウドラインと弟妹3

「えっと……さっき下でヴァンお兄様がこちらを見ているのが見えて、その……。」


アリステラは悲しげな表情を浮かべながら歯切れ悪く私の元へ来た理由を語り始めた。


そんな彼女が握る拳は小さく震えている。


(怯えている?何故?私が一体何をしたと……。)


妹が明らかに自分におびえていると解ると私は理解できないと困惑した。


私はただ何故ここにいるのか、遊ばなくていいのか、それを聞いただけだ。


怯えられるようなことをした覚えはない。


(……言い方がきつかったとでもいうのだろうか。)


なんて自分の物言いを振り返るが、私の物言いはいつもと比べて特別きついものではなかっつたと思う。


こう言っては何だが、愛想のない口調はただのいつも通りだと思う。


ノウスにだっていつもこの口調だ。


だから何がアリステラを怖がらせているのかが私には理解できなかった。


(……面倒くさい……。)


理解できない。


それがひどく私を苛立たせてくる。


これが使用人であれば考えていることが手に取るようにわかる。


なのにまるで私には天才の気持ちなど理解できないといわんばかりに私は兄弟たちについて何も理解できない。


それがまた凡人で弟たちよりも劣っていると現実を突きつけられているようでひどく不快になってきた。


そんな時だった。


「……ヴァンお兄様は私の事が嫌いなんですか?」


「…………はい?」


アリステラが声を震わせながら問いかけてきたのだった。


(嫌い……嫌いか。)


嫌いかどうか。


それを聞かれた私は少し考え込む。


嫌いかどうかと聞かれるとどうなのかがすぐには自分で理解できなかったからだ。


(そもそも嫌いというのはどういう感情を持っていると嫌いという事になるのだろう。)


誰かを特別嫌いと感じた事はないが、それはどういう感情を盛って嫌いと判断するかを知らない故だと私は考えた。


だから嫌いという感情について少し考え、私はアリステラに返答した。


「嫌いではありません。」


(まぁでも、好きでもないですが……。)


嫉妬をするような相手を好きとは思えるはずもなく、けれど関わりたくないや言葉を交わしたいなどの感情はないことから「嫌いか」という質問に対し、簡潔に「NO」と返す。


するとアリステラは突然震わせていた手の震えを止めて微笑んだ。


そして―――――――


「じゃあ、ヴァンお兄様も一緒に遊びましょう!」


「………………………は?」


突然笑顔で驚く言葉をかけられた。


(……遊ぶ?私がアリステラと?)


ただでさえ弟妹の中でたった一人の妹で一番どう扱って良いかわからない存在のアリステラにまさか遊びに誘われるとは思ってもみなかった。


(そういえば先日父上の付き添いで行った伯爵家で話した伯爵家子息は妹と人形遊びをするとか言っていたが……まさか私にそれをしろという事なのか?)


私はひどくひどく困惑した。


アリステラのいう遊びがどのような事をさすのかが全く持って読めなかったから。


なんて思っているとアリステラはポケットから何かを取り出した。


「……それは、カード……ですか?」


アリステラが取り出したのはカードが大量に入っている小さなケース。


しかしそれがどう遊ぶものなのか、遊ぶことなどまともにしたことのない私はわからなかった。


「これはかるたって言います。読み手とプレイヤーに別れ、読み手が読み上げる文の頭の字が書いてある絵の描いてあるカードをプレイヤーがとっていく遊びで、最後に一番多くカードを持っていた人が勝ちという遊びなんです。兄弟皆でやりませんか!?」


アリステラは笑みを浮かべて兄弟全員で遊びたいと言ってくる。


その声かけに私はふと思った。


(……そういえば私は一度も弟妹達と遊んだことが無いな……。遊べば少しでも彼ら彼女を理解できるのだろうか……。)


私にとっては理解が追い付かない弟妹達。


アリステラの笑顔を見て弟妹達を理解したいと思い始めた私は少し不安が残りながらも弟妹達と遊ぶことを決断するのだった。

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