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外伝 クラウスと兄の物語

私、クラウス・ファインヴァルには7歳年の離れた兄がいる。


物心ついたころから兄の優秀さは周囲からたくさん聞くことができた。


そして――――――


「兄上!!!」


ルイス兄上を見つけては駆けだす俺をいつもいつも笑顔で迎えてくれる兄上の人柄が私は何より弟として誇らしかった。


「父上、父上!兄上は本当に素晴らしいですね!!」


「……クラウス、兄を慕うのはとても素晴らしく、微笑ましい事なのだが……私の事も配慮しては貰えんか?」


父上である国王は少し言いづらそうに私にそういいながらため息をついた。


兄上が勉強中の今、構ってもらえる相手がおらず父上の執務室にやってきて兄上について語っていた私に父のテーブルの上の大量の書類に目が行っていなかった。


というか―――――


「兄上なら書き物をしながらでも俺に付き合ってくれますよ?」


兄上の父親である父上は兄上より優秀なはずなのに兄上にできることも父上にできないことは随分とあった。


本当に兄上は何でもできて、兄上を見ていると神様に愛されているんだろうなと感じていた。


物知りで、剣術もできて、いつも堂々と人を引き付ける魅力に加え、本人も慈愛に満ちている。


こんな完璧な兄を嫌う人間なんて存在しないんじゃないかと思っていた……。


そう、あの頃までは―――――――。


「おお!これはこれはクラウス第二王子殿下。お散歩ですかな?」


「え?は、はい……。」


ある日私は突然貴族議会で力を持つ一人の男に声をかけられた。


男の目はひどくいやらしく、私を人として見ていないことはすぐに理解できた。


「……いやはや、クラウス殿下は日に日に大きくなられますな。家臣として、何時も胸がいっぱいになる想いです。」


男は笑顔を浮かべ、私に言葉を言い捨てる。


だが、私とてバカではない。


(クラウス殿下”は”?)


私の兄、ルイス・ファインヴァルは妊娠中の母上が病にかかったことでやむなくして未熟のままこの世の光を浴びる事となった。


そのせいで体の成長が遅く、中にはひどく知識もある方なのに脳にも欠陥があるのではないかというやからまで出始める始末。


貴族たちの中には王族であり、優秀で人としてもすぐれている兄上を見下し、侮辱するものがあまりに多い。


……本当はそのことに対し、感情任せに怒鳴り散らしたいと思うものの私にその権利がないことを私は誰よりも知っていた。


(……何故、うまくいかないんだろう……。)


兄上に憧れ、兄上のように素晴らしい人になりたい。


そう思い私は毎日勉学に励み、剣術も励んだ。


それでも兄上には歳の差もあるだろうが何一つかなうものはない。


7歳となる僕と14歳の兄の身長の差がすでにないことが気になるものばかりなのか、兄上はひどく立派な人で、優れた人なのに昔のような称賛の声を聴かなくなった。


何故誰も兄上のすばらしさを理解してくれないのだろう。


どうして私がただ一般的な成長速度であるというだけで兄上の類まれなる才能を誰もみようとしないのだろう。


どれだけ兄上が素晴らしいか、何時間も語ってやりたい。


そう思うが兄上が称賛されない理由が自分の成長速度にある事を知っている私は何も言葉にすることが叶わないのだった。


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