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第150話

「ねぇねぇ、アリスちゃんはこのカタログの中だとどの置物が可愛いと思う?」


ルイスの店で棚に陳列された商品を拭く作業をしていると突如、レジカウンターの向こうでカタログを見ていたルイスに声をかけられた。


私と過ごした記憶がないから昔のように”アリス”ではなく”アリスちゃん”と呼ばれることに少しだけ違和感を覚えながらも私は問いかけられた問いに応えるべく、カタログの置物がちゃんと見えるようにルイスの傍に移動した。


「……えっと……正直、どれも微妙というか……。」


カタログを見るなり私は素直な感想を口にした。


カタログの置物はどれも可愛いというか、リアルすぎて少し怖い動物の陶器で作られた置物だった。


ウサギですら怖いって、これを作っている職人さんは動物が嫌いなんじゃないだろうかとすら思えてきた。


「……そっか。可愛くないかぁ……。う~ん……。」


(え?まさかルイスは可愛いって思ってたの!?)


私の反応に少し残念そうな息を吐き、悩みこむルイス。


そして―――――――


「ねぇ、アリスちゃんは動物は好き?」


ルイスは少し眉をひそめながら男性の姿になっても相も変わらず長い私の髪を優しく引っ張り、私の気を引いて問いかけてきた。


(か、可愛いっ……!!!!)


上目遣いとか、本当もうあざとすぎる!!!!


しかも何?


ちょっと自信なさげに聞いてくるのがもう狙ってるの!?と叫びたくなるくらいだ。


なんて思いながらルイスのあまりの可愛さに手のひらで尊いものを見てときめきすぎた自分の目を覆いながら天井へと顔を向けているとまたも「う~ん」と唸る声が聞こえてきた。


唸るルイスをちらりと盗み見てみるとカタログと難しそうな顔をしてにらめっこをしている。


(なんだろう……悩んでるルイスも可愛いな……。)


こんなふうに何かとにらめっこしてるルイスは新鮮だ。


親心のような温かい気持ちで見つめていると店の扉が開いた時になるベルが鳴り響いた。


「いらっしゃいま――――――あ!」


笑顔で振り返り、挨拶をした瞬間私は店に入ってきた人物を見て声をあげた。


「お疲れ様です、アリス。少し早いですが迎えに来てしまいました。」


柔らかな笑みを浮かべながら微笑みかけてくるハウル。


そんなハウルの笑顔に胸が温かくなった私はちらりと店の時計を見た。


(休憩まであと少しあるんだけど、どうしよう……。)


休憩までなんとあと30分。


どこかで時間でも潰してくれていたらよかったのにまさか店に入ってきてしまうとは……。


「二人は一緒にお昼ご飯を食べる約束でもしてたの?」


「え?ま、まぁ……。」


他意はないような感じでさらっと首をかしげながら質問をしてくるルイス。


そんなルイスに返答を返すとルイスはレジカウンターにある椅子から降り、カウンターの後ろの棚にあった発注書ファイルを私に手渡してきた。


「悪いんだけど、お昼休憩入る前に発注作業だけお願いできるかな?あと、同時進行で在庫管理表もつけておいてもらえると嬉しいかな。」


「あ、はい。わかりました。」


ルイスに指示された内容は20分ほどで終わる。


遅くなっても30分はかからない作業だろうから妥当な注文だ。


特にお昼ご飯の時間を邪魔されるでもなく、普通に接してくるルイスにこの間の略奪宣言は本気ではなかったのかな?と、勝手ながら少しがっかりしながらも私は店内に入ってきたハウルに視線を向けた。


「……ルイス、こちらの椅子に腰をかけさせていただいても平気ですか?」


「もちろん。あ、よかったらコーヒーや紅茶とかどう?有料だけど。」


ルイスと二人きりは少し気まずいだろうか。


なんて思ったけれどハウルは自然とルイスに語り掛け、ルイスも自然と言葉を返す。


お互いにわだかまりのあった関係のようには見えないやり取りに安堵しながら、私は早く作業を終わらせようと思い、倉庫へと急いだ。


そして――――


(……あ、ハサミがない。)


在庫管理をするうえで開けなければいけない箱を開けるためにハサミが必要になった私はいつもハサミが置いてある場所を見るけれど今日はそこにハサミはない。


どこかに落ちてしまっているのだろうか。


とはいえ、探すのは少し時間がかかるかもしれない為、私はレジカウンターのところにあるハサミを借りようと店内に戻る。


そして、倉庫の真上にある店内へと続く階段を昇っている時だった。


「まさか、君とまたこんなふうに話せる日が来るなんて思わなかったよ。」


ルイスの恐らくハウルに語り掛けている声が聞こえてきた私は反射的に立ち止まってしまうのだった。

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