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第134話

「悪いけど俺に小細工は通用しない……。アリステラ、一体その男に何をされたの?」


ひどく冷たい声と冷たい瞳で語り掛けてくるブラン。


基本自分の興味が持てることに対してしか興味を示さない性格からか人にこんなふうに冷たく語りかける事なんてしないブランの初めて見る表情と声。


それらに少し、恐怖すら覚えてしまう。


そして何より――――――


「何をされたって……何?」


ブランの言葉はおそらく体を作り替えていることとは別件についてを問いかけてきている。


それはなんとなく理解できた。


だからこそ一体「何」をされたというのだろう。


そもそも、ハウルさんは私に何かをする必要だってないはずだ。


それに――――――


(情に流されるなって言われても、こんなに不安そうなハウルさんに追い打ちをかける事は……私にはできないよ。)


ブランはとてもすごい子だ。


だからブランの言葉をちゃんと聞かなければいけないというのはわかる。


解るけど―――――――


「帰りましょう、ハウルさん。大丈夫です。私は傍にいますから。」


私は震えるハウルさんの腕に自分の手を置いた。


するとハウルさんの震えは止まり安堵した表情を見せてきた。


「ちょ、アリステラ!!お前マジで言ってるのかよ!お前はなんか変な術とかかけられて惑わされてるかもしれないんだぞ!?どっからどう考えてもそいつはまともじゃねぇよ!現にそいつは俺らの記憶からお前を―――――」


「―――――やめて、ヴァルド。」


私の選択に対し声を荒げてくるヴァルドの言葉を割き、私はヴァルドを制するように言葉を投げかけた。


その言葉を受けヴァルドは「何でだよ!」と声を荒げて返してくるけど、私は小さく息を吸ってはいて、ヴァルドに言葉を返した。


「確かに私の知らない何かをされている可能性はあるかもしれない。だけど私は現状に不満がないの。私が真実を知ることで傷ついているハウルさんをもっと傷つけることになるなら――――――真実は知らなくていいや。」


不明確な記憶がある。


それはとても不安で、もやもやする。


だけどハウルさんを見ていて思う。


例えハウルさんが何かをした結果、今私に帰ろうといってくれるドレッドやヴァルド、ブランの手を払ってまでハウルさんを支えたいと思う感情が生まれているのだとしても……


「行きましょうか、ハウルさん。」


「……えぇ。」


この時期にはすでに原作では死んでいた私がいなくてもきっとみんなは幸せに生きていけるのだろうとおもうのだ。


私の手を取り、弱弱しく笑うこの人以外は―――――――。






「くそっ!!!!どうなってんだよ!!!!」


アリステラとハウルが去り、残されたヴァルド、ブラン、ドレッドはその場から動くこともできず、取り残されていた。


「ブラン、アリスが洗脳されてる確率ってあるのか?」


「ううん、多分洗脳ってのとは違うと思う。だけど確かに黒い……魔導士が使う魔力をアリステラから感じた。」


冷静さを失い声を荒げるヴァルドに対しドレッドとブランは冷静に言葉を交わし合う。


二人とも声のトーンがワントーン低くとも冷静さを保っているように伺える。


そんな二人に対し、冷静さを欠いているヴァルドは声を荒げながら二人に語り掛けた。


「だったら浄化すればいいだけの事だろ!?俺とブランがいればどんな魔法だって無力化できる!だろ!?ブラン!!!その力のおかげで俺は、俺たは―――――んんっ!!!」


大きな声で声を荒げるヴァルド。


そんなヴァルドの口を手でふさぎ、黙らせるドレッドは額に冷や汗をかいていた。


ヴァルドの発言にひどく焦っていたようだ。


そして口を塞いだことで暴れるヴァルドにドレッドは言葉をかけた。


「おい、馬鹿ヴァルド。その力の事を大声で言うなって忠告しただろ?その力の事がとある連中に知られるとまずいってことはお前だって理解しているはずだ。お前はよくてもブランが危険を被るんだぞ?」


ドレッドはひそひそとヴァルドに言葉をかけるとその声かけを受けたヴァルドはおとなしくなった。


そんなヴァルドを見てヴァルドの口を塞いでいたドレッドの手がどけられるとヴァルドは小さな声で「悪い」と謝罪を口にした。


「やっぱりルイスさんに及んでるあのハウルって男の魔法の影響を取り除いてアリスについて思い出してもらった方がやりようがあると思うんだが?」


しおらしく謝罪をするヴァルドを見たドレッドはため息交じりに現状を打開できるような策を口にした。


しかしその言葉が一瞬しおらしくなったヴァルドを刺激した。


「それだけは絶対しねぇ!!!そもそもあいつが今あのハウルとかいう男におかしくされてんのはその男のせいなんだろ!?」


再び荒々しい大きな声をあげルイスの協力を拒むヴァルド。


しかしそんなヴァルドと3つ子であるブランはドレッドの意見に反対でも賛成でもない様子で唸っている。


そして少しして意見がまとまったのか、口を開いた。


「現状は様子を見たほうがいいと思う。魔法の無効化に関しては多分俺たちの力はあるステラの特別な力の残りかす程度しかないだろうからアリステラでも解けないのか、解く気がないのかを慎重に見極めないと今後の接触すら嫌がられる可能性があるし、そしてルイスって人に関しても今接触させるのはよくないと思う。これは勘だけどアリステラがされてる何かって多分、そのルイスって人に関連していることだろうし……。」


普段は口数の少ないブラン。


しかし自分の考えや意見を述べるときは意外と話す。


そんなブランの考えはいつだって冷静に物事を判断し、語られる考えなのでドレッドとヴァルドを納得させるには十分だった。


「それに気に入らないけどアリステラはあの男にひどいことをされているわけじゃなさそうだった。事を急いであの男を刺激するのも避けたい。」


ブランが少し冷たい声でそういうとドレッドもヴァルドも同意見だといわんばかりに頷いた。


それはつまりブランの考え通りしばらく見守るという事で結論が出たという事なのだが、約一名、心の中に完全に同意したわけじゃないといわんばかりの考えをはらんでいるものがいた。


(さて、どうおチビさんにアプローチをかけるかな。)


ドレッドはルイスに何かしら行動を起こそうと一人模索するのだった。

ブランの一人称が最初と変わっていたため変更しました。

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