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第123話

「境遇は似ていても考え方は似ていない、という事ですか。……残念。慰め合えると思ったんですけどね。」


苦笑いを浮かべながら言葉を言い放つハウルさん。


私はあくまでハウルさんと似た経験をするかもしれなかっただけで、同じ経験をしたわけではない。


憶測で決めつけることはよくないし、可愛そうだからと同情でハウルさんに思いを寄せることもない。


……だけど、ハウルさんがルイスの身体を作り替えて憎しみをぶつけたことは正直、納得できる行動ではあった。


……あったけど――――――


「……ルイスは貴方に体を作り替えられて、成長できない身体になって貴方の望む通りショックを受けたといってました。そして、それだけの事を自分がしたんだって、後悔してました。生きていたら考え方って変わってくると思うんです。だから……今のルイスと一度、ちゃんと向き合って話し合うことはできないんでしょうか?」


人を憎み続けるのって経験がないから完全に理解をすることはできないけど、でもそれはとてもとてもつらいことだと思う。


これは自分がルイスに自由に近づけるようになりたいとかいう願望とかはさておいて、こんなにも苦しんでいるハウルさんの力になりたい気持ちからの提案だ。


「ハウルさんが望むならその、力になれるかわかりませんが癒しの力で気分を落ち着かせれるよう頑張ります。だから――――――」


だから考えて見て欲しい。


そうハウルさんに言い放とうとした時だった。


ハウルさんは私の頬を両手で包み込んだ後引き寄せ、私の唇に自分の唇を重ねてきた。


ひどく傷ついている姿を見せるハウルさんを突き飛ばすことができず、人形のように固まっているとほどなくしてハウルさんは私から静かに離れた。


「本当に優しいですね、アリスさん。別に拘束しているわけではないのに拒まないなんて。それともただ流されやすいだけなのか……。まぁ、そんな貴方に免じて考えてみてもいいですよ。貴方が俺の傍にいるという事実だけである意味、忘れてはいても俺と同じような境遇にルイスを陥れるという事は叶っているわけですしね……。」


「…………あ。」


……今、気づいた。


ハウルさんからのキスを拒まないという事はある意味浮気になるという事実を。


(拘束されている時は生きるために仕方なかったといえるけど、今のは完全違うよね……?あれ、ってことは私――――――)


「ルイスを裏切ってくれてありがとうございます、アリス。」


「っ~~~~~。」


にっこりと嬉しそうに笑うハウルさん。


そんなハウルさんに嵌められたという気持ちが沸いてくるけど彼を拒めなかったのはどういう理由からであれ私だ。


つまり―――――――


(私のバカぁぁぁぁぁぁ!!!!!!)


悪いのは私だという事はまごうこと亡き事実だという事だ。


でも、だけど――――――


「ハウルさん!!!もうキスは絶対やめてください!!!そもそも体を使ってする愛情表現はトラウマになってるんじゃなかったんですか!?」


「別にキスはトラウマじゃありませんよ。逆に言えば俺の最大の愛情表現は”キス”です。それだけ貴方が好きだという事だと理解してくれませんかね?別に、乱暴に襲っているわけじゃないんですし。」


「お、おそっ!?そ、そういう問題じゃないんです!」


キスが裏切り行為だと気づかされた以上、同情心から彼を拒まないという事はもうできない。


「私は今後、絶対ルイスを裏切るような行為はしませんからね!!」


「もう恋人でも何でもないのに?」


「うっ……。」


恋人ではないのに。


その言葉がひどく胸に突き刺さる。


でも――――――


(い、いつかもし元の関係に戻れた時の為にも後ろめたいことはしたくないし……。)


「……それでも、あの、ハウルさんが嫌悪した行動を私に取らせないでくれると嬉しいです。」


自分がされて嫌だったことを自分がするでもなく、相手にダメージが与えられるよう別の人間にさせるというのはどんな事情があれ最低だ。


ドSだし、性的趣向も変わっているけど多分、根は悪い人じゃない。


そう思いながら恐る恐る思うことを打ち明けてみると意外な事にハウルさんは驚いた表情をしていた。


「……そうか。現状だとそういうことになりますか。では一刻も早く貴方の中で一番の存在が俺になるよう努力しないとですね。その場合は”浮気”ではない。”心変わり”ですから。」


「…………。」


笑みを浮かべて語るハウルさんの言葉に私は言葉が返せなくなる。


言っていることはわかるし、本当に今の私はルイスの恋人ではない上、ルイスだって自分に恋人がいるという感覚さえないだろう。


いつかは、と願っていてもそのいつかが来る前にルイスが別の人と付き合う事だってあり得るわけだ。


例えば――――――


(私のことは忘れても、ドレッドとの記憶は忘れてないんだよね?)


もしかしたら私という存在が消えたことでドレッドとの接点はなかったことになっているかもしれない。


だけどそうとは言い切れない以上、ルイスが誰かを好きになって付き合う確率がゼロではないと初めて理解したのだった。

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