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第102話

「…………説明してくれてありがとう、アリス。多分君を男にしたのは僕の昔の知り合い……というか、昔付き合ってた元カレのハウルだ。」


「……ハウル……。」


ルイスにハーネスさんの本名を聞き、私は無意識にその名前を繰り返した。


私が本名を名乗ったからと言え彼が本名を名乗るはずはないと思ったけど思った通り偽名だったようだ。


「その、ハウルさんの口ぶりを思い返すとその、ルイスの事を今もすごく思っていそうだったんだけど……えっと……。」


ルイスも同じ気持ちだったりするのか。


なんてことを聞きたいけど聞くのが怖い。


そう思いながら私はルイスにうまく問いかけられずに言葉を探しているとルイスは大きなため息をついた。


「彼を愛しいと思う気持ちはかけらも残ってないよ。彼に対してあるのは罪悪感だけ、かな。」


「……罪悪感?」


言葉の意味が解らず首をかしげる。


そんな私にルイスは優しく微笑みかけ、私の頭をなでてくれた。


「アリス、もしかすると君はもう元には戻れないかもしれない。本当にアリステラという存在を捨てて生きなければならなくなるかもしれない。」


「…………え?う、嘘……。」


優しくなだめるように私をなでるルイス。


そんなルイスの表情に一瞬安心感を覚えたのもつかの間、すぐさま受け入れがたい現実を突きつけられた。


「……ごめんね、多分君がそうなったのは僕のせいだ。だからアリス、例えばの話なんだけど…………もしも女の子に戻れなかった場合、君はもうアリステラ・クラウドラインには戻れない。その責任を君の生涯のパートナーとなって、君に苦労をさせないことで償わせてくれないかな?」


「…………へ?」


何時もとそう変わらない声のトーン。


そんな声のトーンに加え、まるで日常会話をするかのようなテンポで今、とんでもない言葉を吐かれた気がする。


多分、多分だけど――――――


「こ、恋人すっ飛ばしてプロポーズ……?」


私の耳と頭がおめでたい変換をしていなければ恐らくそういうことな気がする。


いや、というかそういうことだよね!?


なんて思いながらルイスの言葉を待つ。


するとルイスは眉をひそめて苦笑いを浮かべた。


「なんかアリス見てるといろいろ考えるのが馬鹿らしくなっちゃった。」


「…………へ?」


馬鹿らしくなった。


それはきっといい意味で感じたわけじゃないような気がする。


つまりは多分、私がめちゃくちゃだから些細な事を考えてる自分なんか小さい、的な事を感じた結果なんじゃないかと思えてならない。


(何だろう。嬉しいけど素直に喜べないんですけど?)


なんか少し上げて下げられた気分だ。


というか――――――


「どういうつもりなの?昨日はドレッドと良い感じになれば嬉しいみたいなこと言っておいて。」


【責任】。


その言葉が少し私の中で引っかかった。


プロポーズは「仕方なく」なのかなぁなんて思ってしまう。


というか思わずにはいられない。


身体が男の子になったこと、そしてプロポーズを受けたこと、それで頭がごちゃごちゃになってしまっているけどこんな状況でもなければルイスはきっとこんなことを口にしていないとなんとなく理解ができてしまうのだ。


「…………なんとなく気づいてたんだ、彼が何かを仕掛けてくることを。最近やたら僕の視界に彼がちらついてたからさ。だから、巻き込む前に……なんて思ってたんだけど、君ってばいつの間にかもう巻き込まれてるんだもん、驚いたよ。」


ルイスはそういって私の頭を静かに撫でる。


私はルイスに大人しく頭を撫でられながら少し複雑な気持ちになってしまった。


あまりにもいつもとは違う発言の数々。


それの真意を考える事すらできなかった自分が探偵助手として少し恥ずかしくなった。


でも、恥ずかしいのは多分それだけじゃない。


「……ち、ちなみにそれは私が女の子に戻れた場合はどうなるの?」


「え?普通に白紙に戻すよ?」


(なっ!!??)


迷いもせずすぐさま切り出された私の質問への返答。


その返答に驚いているとルイスはくすくすとおかしそうに笑い始めた。


「アリスってば、そんな驚きと絶望を合わせたような顔しないでよ!面白いなぁ。」


面白おかしそうに笑うルイス。


そんなルイスをみてるとルイスの「白紙に戻す」が冗談なのか本気なのかわからなくなってすっきりしない。


なんて思っているとルイスに突然抱き着かれ、私の視界はルイスのいたずらっ子のような笑みでいっぱいになってしまった。


「嘘だよ。仮に君が女の子に戻ってもアリスは目を話すとすぐ厄介ごとに巻き込まれるから気が気じゃないし、手放してなんてあげないよ?アリスが嫌がったとしても一生手放してあげない。それに僕の愛って多分重いけど――――――僕の生涯のパートナーになる?」


ルイスはゆっくり私の額に自分の額をくっつけながら問いかけてくる。


そんな問いをするルイスの息だって肌をかすめるし、私としてはとんでもなく正常な状態ではいられないような状況だ。


……だけど――――――


「本当に、絶対、手放さないでね?」


ルイス、私はどんな時でも貴方の傍に居れる選択をとるだけだ。

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