お菓子と一緒に込めた想い
俺には昔から仲の良い幼馴染みがいる。
俺とばかり遊んでいたせいか、年頃のJKとは思えない程、ファンタジーな武器とかが大好きな、ちょっと変わったやつだ。
でもまぁ、趣味も合うし、一緒にいて楽しいし、可愛いし――
だから今回は、イベントに乗じて、長年の気持ちを伝えてみようかと、例年より気合いを入れてお菓子を作ったのだ。
作り上げた力作を、手紙と一緒に小箱に入れる。
そして、翌日。
少しソワソワしながらも、1日の授業を終えて、放課後なった途端に、なぜか、とんでもない悪寒に教われ、咄嗟に鞄を持って教室を飛び出した――直後。
「あのヤロウ!逃げやがったぞ!」
「おい!お前らはあっちに回り込め!」
おかしい、いったい何が起こっている?
俺は幼馴染みのミサキに、お菓子を渡しに行こうと思っただけなんだ!
そんな想いを胸に、暴徒と化した同級生達から逃げ回っている内に校庭へ出てしまい――そこで待ち伏せしていた、複数の同級生達に円形に取り囲まれてしまった。
「やっぱり、帰っちゃうつもりだったんだね。」
退路を断たれた俺は、聞こえた言葉にハッとして、包囲の外からゆっくりと近付いて来た声の主に、鋭い視線を向ける。
「ミサキ、親衛隊まで駆り出して……一体何のつもりだ?」
「ケンが悪いんだよ!毎年朝一でお菓子くれてたのに、今年は逃げるから!」
いや、だって今回はちょっと心の準備とかが必要でだな!
「ま、まぁとにかく! 毎年、言う前に貰ってたから、ずっと言えてなかったけど、今日は、ちゃんと伝えるね! えっと……Dead or Alive♡」
………………ん?
数秒考えてみたが、意味が分からない。
なぜ目の前にいる幼馴染みは、可愛らしく首をかしげながら、俺の方へ両手を差し出し、生きるか死ぬかの選択を迫って来た?
すると彼女の隣に居た奴が、何かを耳打ちした、次の瞬間。
ボンっと音がするくらいの勢いで、顔を真っ赤にした彼女は――
「と、と、Trick or Treatぉ!!」
両手で顔を覆いながら、やけくそ気味に叫んだ。
「ぷっ……ククク。」
「わっ、笑うなぁぁ!」
真っ赤な顔のまま、両拳を上下に振って怒るミサキ。
「悪い悪い、ほら、今年の分。」
「……!!ありがとう!――うわぁ!氷砂糖の剣!格好いい……あれ? これ手紙?」
あっ!しまった!
「えっと……『前から好--』……へ? ちょっ……コレって……」
「ここで読むなぁぁあ!」
この後、親衛隊からの祝福を受けたのは言うまでもない。