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 いつもの声が私を呼んで、私はついに手を伸ばす。朦朧とした意識の中で声の方へと望んでしまう。

 私とあれの間には数十メートルある訳で、達する筈もなかったけれど、伸ばした指は闇に沈んだ。向かいの家の垣根の陰に指がすっぽり突き抜けた。


 驚異のあまり目が覚めて、だけど手は引き戻さずに、黙って闇を見つめていた。夏の陽射しに温まりきった、嫌に不気味な生ぬるさ。

 それでも指を引き抜かないで、ささやかな熱を感じていた。私は知りたくなかっただけだ。果たして指を引き抜いたとき、誰か掴んできはしないかと。





 そうして逡巡している内に、陰は私を引き摺りこんだ。





 八月終わりの午後二時頃。

 涼しい部屋には誰もおらず、ただ蝉だけが鳴いている。


 カチコチカチと針が進む。

 ミシリギシリと梁が軋む。


 そうしていると、どこからか、誰かの名を呼ぶ声がする。蝉の呼ばわる音に紛れて知らないナニカの声がする。声はどこから聞こえているか。


 それはあなたの耳元で。

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