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決闘の終わり

 クロはフェリルの姿で姿を現した。

 それは、相手を恐怖させるのに十分だった。


「さぁ、やろうか。僕の準備は整った」

「え、あ、いや、その」

「ほら、立てよ」


 僕は、そいつの肩を掴んで立たせた。


「ほら、まだ戦いも始まってないんだから。早くやるぞ」


 その会場は誰も喋っていない。実況の人も何も喋って無い。


「な、なんで、フェンリルが……」

「ルールに書いてあるだろ。召喚は一回だけありだって。ほら、やらないと負けるぞ? 良いのか? 今回の決闘の賭け内容覚えてるよな?」


 今回の決闘をするにあたって、相手が条件を付けて来た。それが、負けた方がミルさんたちに近づかない。と、言うものだ。


「ま、けて、られ、ない」

「そうだよな。ほら、立てよ。負けられないんだもんな」


 そう言うと、相手は立ち上がった。


「クロ。やっちゃって」

「う、うむ。分かった」


 そう言って、クロは歩いて近づいて行く。そうすると、相手は恐怖で足が震えていく。


「ほら」


 そう言って、クロは爪先で剣に触れると、パキンッと折った。

 それと同時に、相手の心も折った。


「……ま……負け……ました……」


 そして、決闘は呆気なく終わった。


「それじゃ、2度とミルさんたちに近づかないで下さいね。それと、ファンクラブなんて作ったら潰しますね。2度とミルさん、メイさん、イヤさんのファンクラブを作らせませんよ」


 そして、僕は会場を後にした。


「イサミくん!!」


 その声に、僕は足を止めた。


「えっと、その……」


 僕に声を掛けたその人は、なんて言ったら良いのか分からない様子だった。


「この間言ったでしょ?」


 僕がそう言うと、その人はハッとして顔を上げた。


「イサミくん…………ありがとう」


 メイさんは、笑顔でそう言ってくれた。


「……はい」


 その日から数日は、僕は孤独に過ごしていた。


「ねぇ、クロ」

「なんだ?」

「あれで、良かったのかな?」

「また、その話か?」

「うん。またこの話」


 僕はこの数日間。ずっと、クロやウミにこの話を何度も相談している。

 決闘が終わってから、メイさんに一度ありがとうと言われてから、会っていない。

 クラスのみんなも、誰も僕に話しかけて来ない。


「あの勝ち方は確かに恐怖をみんなに植え付けた。偶に、散歩しているが、ファンクラブは解散していた。それに、新しいファンクラブも出来てる感じは無かったぞ」


 そう、あれ以来特にこれといったファンクラブ騒動は無くなっていた。

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