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少し怒った

 メイさんに連れれて中庭にやって来た。


「ほんと、ごめんなさい!!」


 僕はいきなり謝られた。


「え、な、なにがですか?」

「ほら、さっきイサミくんを囲ってた人達。多分、私たちのファンクラブ……だよね?」

「あー、はい。そう、ですね」

「ごめんなさい!!」

「いや、あの、なんでメイさんが謝るんですか? 意味が分からないです」

「え、だって、私たちのファンクラブだし……」

「一つ、聞きたいんですけど、そのファンクラブってメイさんが立ち上げたんですか?」

「違うけど」

「あの人たちが勝手にファンクラブを作ったんですよね?」

「そう、だよ」

「だったら、メイさんたちは悪くないじゃないですか。だって、おかしくないですか? こっちはただ学校を楽しんでるのに、勝手にファンクラブなんて作られて、その間にルールまで設けて。近付かないようにしよう、遠くから見るだけにしよう。その中に、メイさんたちが仲良くしたかった人たちも何人かいた筈です」

「たしかに」

「そもそも、なんでメイさんが悪い事してないのに謝ってるのか。これが一番意味が分からない。悪い事をしたのはメイさんじゃなくて、ファンクラブの人達でしょ? だったら、謝るのはメイさんじゃなくて、ファンクラブの人達だよ。メイさんは怒っても良いんですよ?」

「……怒るって、でも、私たちのことを慕ってくれてるわけだし」


 メイさんたちは優しすぎる。何か、自分たちの周りに、ファンクラブの所為で害が起きても、謝ってきたのはファンクラブの人たちじゃなくて、多分メイさんたちだと思う。


「確か、この学校って決闘ってありましたよね?」

「うん。あるけど……」

「よし。じゃ、ちょっと行ってきます」

「え? ちょっと、イサミくん!? ……行っちゃった」


 僕は、メイさんを中庭に置いてとある場所に向かった。


「ここだな。失礼します」


 ドアをノックして中に入る。


「いらっしゃい。何の用かね?」


 そこには、眼鏡を掛けたお兄さんが一人座っている。


「ここに来るのは一つしか理由はないでしょう? 決闘ですよ」

「ほう。見たところ、君は今日の編入生だね? そんな君がいきなり決闘? 相手は?」

「『高嶺の花束』のファンクラブです」


 僕がそう言うと、その人は驚いた表情をしていた。


「ふむ。なるほどね。辞めて置いた方が良いと思うよ? 君、弱いでしょ?」

「そうですね。僕は弱いです」

「その顔、何か秘策があるみたいだね。分かった、その決闘僕が受理しよう。ま、相手が了承したらの話だけどね。何か、相手に伝える言葉はあるかな?」

「そうですね。『高嶺の花束』は、僕が貰う」


 そう言って、僕はその場を後にした。


「たしかに、この言葉は痛いよな」


 僕が出て行ったその部屋で、眼鏡の位置を直しながら、その男は少し笑っていた。

 そして、僕は……


「は、恥ずかしい!!!」


 トイレで悶えていた。

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