高台からの景色
人集りの真ん中にいた僕は、小さい背を活かしてなんとか逃げる事が出来た。
「や、やっと逃れた」
まだ朝なのを確認して、高台に向かって歩き出していく。
「子供が、こんな早くに何してるんだ?」
「おはようございます。家族と旅をしていて、この間来たばっかりなんですか。なので、高台からこの街を見渡したいなって思ったんです」
「そうなのか。だったら、これをあげるよ。まだ、朝も早いんだから少しお腹空いてるだろ?」
そのおじさんは、今鉄板で焼いているお肉をお皿に乗せて渡して貰った。
「そのタレに食べてくれよ」
「分かりました。ありがとうございます。これ、お金です」
「いらんいらん」
「え、でも……」
「高台からの景色は、俺も見に行った事があるんだ。それはもう、綺麗だった。君も、それを見てこの街を好きになってくれたら、俺は嬉しい。だから、お代は要らないよ」
「……分かりました。ありがとうございます!」
僕は、そのお肉を食べながら高台に向かっていく。
「あの人が……待っているぞ。緑の国で」
そして、その屋台は姿を消した。
「この坂を登ったら、良いのかな?」
結構急な坂を登り、高台を目指す。
「にしても、このお肉美味しいな。帰りにも寄ろうかな」
そして、その坂を登りきり後ろを振り返ると、そこには今まで見た事もないような景色が広がっていた。
朝日が海に反射してキラキラ輝いていて、遠くにワイバーンが飛んでいる。そして、下に見える街並みがそこから見える景色をさらに美しくしている。
「……綺麗」
「イサミさんもそう思う?」
「……え? マリンさん?」
「昨日ぶりね」
「どうしてここに?」
「昔っから、毎朝ここに来るのが日課なのよ」
「……そうなんですか」
朝日に照らされるその顔はとても素敵だった。
「それ何食べてるの?」
「これですか? なんか、よく分からないんですけど、ここに来る前に屋台で貰ったんですよ」
「へー、ちょっと食べても良い?」
「はい。どうぞ」
それをあげると、マリンさんはとても驚いたような顔をしていた。
「……ありがとうね。美味しかったわ」
そう言って、マリンさんは帰ってしまった。
「さて、僕も帰ろうかな」
僕は来た道を戻り、さっきの店でお肉買おうとしたが、さっきの場所に何も無かった。
「間違ったかな?」
それでも、特に気にする事なく家に戻った。




