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ウミの力

 次の日は雨が止み、綺麗な青空になっていた。


「それじゃ、早速クエスト受けに行くよ」

「うむ。妾の力試しだよな」

「そうだよ。クロ達はどうする? って、うおっ!」


 クロ達の方を振り向いた瞬間。全員が俺にタックルして来た。


「みんな、そんなに行きたいのか。んじゃ、行くか」

「キュル!」

「ワフッ!」


 そして、僕、ウミが右隣、クロが頭の上、ルルが左隣、モフラを持ち。ギルドに入っていった。


「うわっ!」

「え、そんなに驚きます?」

「驚く驚く。なんでお前はそんなに毛が多い奴に囲まれてるんだよ」

「いや〜、僕がもふもふ好きなのがありますかね」

「はぁ、お前は相変わらずだな。んで、初めて見るそっちのお方は?」

「ウミだよ。よろしくやってね」

「おう! 俺は、ドワーフのケイドだ。よろしくなウミさん」

「うむ。お主と仲が良いのなら、よろしくだ」

「この人は、最近仲良くなったんだけどね。話してて楽しいんだよね」

「それで、今日は何の用だ? いつも通り薬草採取か?」

「違いますよ。ウミの力試しですよ」

「あぁ、なるほどな」


 ケイドと別れ、クエストを受けた僕は、いつもの森までやって来た。


「今日の討伐対象のお出ましだよ」

「うむ」


 出て来たのは、繁殖力の高いゴブリンだ。


「頑張ってね」

「わかっておる。ジッと見てておくれよ。特に、こことか、な?」

「だから、辞めてくれ。それに、魔物の前だよ」


 ウミがちらっと胸を見せてくる。


「ぷっ、すまんすまん。それじゃ、行ってくるぞ」


 ウミが、何処からか刀を取り出した。


「え、今何処から取り出したの?」

「後で、教えてあげるよ」


 相手のゴブリンは五体。それに対してウミは刀を鞘に納めた状態で腰を落とした。


 そして、ゴブリンがウミを攻撃する為に足を動かした瞬間、ウミがその場から消えた。


「……え? 何処に行った?」

「にゃー」


 クロが目線を向ける所にウミはいた。


 ゴブリンの背後に立っていた。

 そして、いつのまにか抜いていた剣を鞘に納めた瞬間、ゴブリンの身体が2つに別れた。


「どうだ? お主よ」

「うん。ウミがめっちゃ強いのがよく分かった」

「うむ。なら良い。そうだ! お主よ。ご褒美が欲しいのだ!!」

「え? ご褒美?」

「そうじゃ! 妾はお稲荷さんをご所望する!!」

「ごめん。それは今は無理」

「な、何故じゃ!!」

「だって、無いんだよ」

「無い?」

「そう。無いの。米も、酢も、油揚げも。なにもかも無いの。だから、今は無理なんだよ」

「そ、そんなぁ。……だったら、お主の膝枕をご所望する」

「……恥ずかしい、けど、まぁ、いっか」


 そして、僕たちはクエストの報酬を受け取り宿屋に戻った。

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