刑執行
クロにはお肉を、セイラには野菜又は山菜を取ってくるように頼んだ。
その間、ルルに魔法で作った水を飲ませて休ませている。
そして、お稲荷さんを全部食べたウミはどうしようか。お稲荷さんはウミの為に作ったから怒ることでもない。けれども、けじめは必要だと思う。
「ウミ。ちょっと来て」
「う、うむ」
「ウミが珍しくお稲荷さんを摘み食いしていたのは驚いた」
「そ、そうだな……」
「でも、怒ってはない。ウミの為に作ったお稲荷さんだからウミが好きなように食べるのはいいと思う。けど、つまみ食いをした事は叱る」
そう言うと、ウミは尻尾を地面に置いてシュンとしている。
「って事で、ウミは俺に撫でられる刑だ!」
「う、うむ。・・・?」
「ほら、こっち来て」
ウミに近くに来てもらい、俺は正座してそこにウミの頭を乗せた。膝枕だ。
「ウミの頭って撫でやすいし柔らかいな」
「う、うぅ。は、恥ずかしいの」
「そう?」
ウミは気付いていないが、尻尾がバタバタしてものすごく喜んでいる。
「はぁ、もふもふだね。でも、少しゴワゴワして来たな」
「なっ!? ほ、本当か?」
「うん。何処か水辺を見つけたらみんなで水浴びでもしようか」
「うむ。それが良いな。エルフの森に入る前に身体を清潔にしないとな」
「エルフの森は厳しい所なの?」
「いや。そういうところでは無いな。ただ、エルフの森の神秘力を自分の体の汚さで汚したく無い。それだけだ」
「何、神秘力って」
「綺麗過ぎて、言葉に出来ないが、まぁ、自分で見て感じで欲しい」
「ふーん」
ウミと喋っている間もずっと頭を撫でて、癒し癒されていると、水を無我夢中で飲んでいたルルがこちらに気付いた。
「あー! 僕も!!」
「え? グヘェッ!」
ルルは、ウミに当たらない様に配慮した為か、俺の顔面目掛けて飛んできた。そして、見事に前足が俺の頭にクリーンヒットした。
「お、お主!! 大丈夫か!?」
「う、うん。何とか……」
ルルはそんな俺を見て特に悪びれてもいなくて、尻尾を振って俺の頭を跨いでいる。
「ルル。ちゃんと撫でてやるから。ちょっと下がってくれ」
「う、うん」
素直に下がり、俺は身体を起こした。そして、ルルは俺の後ろに回り横になり、俺の背もたれになってくれた。
ルルが横になるとちょうど脇の下あたりにルルの顔が来るのでウミを膝枕して撫でながらルルも撫でる。
そんな事をしているとクロ達が獲物を捕らえて帰ってきた。




