閑話〜ifの世界線〜『クリスマス』後編
本日2話目です。こっちも長くなりました。
そして、それぞれ買い出しと飾り付け、料理とバラバラに作業を始めた。
「それじゃ、全部を同時進行で行くよ!!」
「任せて!!」
「よし、まず始めに……」
「メイ、こんな感じでどうかな?」
「うん。バッチリ」
「「それじゃ、飾り付け開始だよ」」
「えーと、ミル? 何してるの?」
「これ可愛くない? あー、これはイサミくんに合いそう! こっちも……」
「誰か、助けてくれ」
そして、一つの班を除いては準備は万全に進んでいた。
「あれ? 遅いなぁ」
「道に迷ったのかな?」
「探しに行っても宜しいでしょうか?」
「あー、うん。頼むよ、ありがとうね。
メイドの1人にレイド達の探索を任せたは良いが、こっちで今出来ることは終わったので、メイさんとイヤさんの進捗を見に行ってみた。
「メイさん、イヤさん準備はどうですか?」
ガチャっとドアを開けて中に入ると、そこには、とても綺麗に飾り付けされたクリスマスツリーが立っていた。
「おお!! 凄い綺麗!!」
「「ふふん。どう? 完璧じゃない?」」
「うん。完璧!」
さっきメイさん達が自分の自宅に帰って取ってきたのが、クリスマスツリーに飾り付けする物だったらしい。
モミの木に装飾された金色のプレゼント赤い杖のおもちゃ。そして、松ぼっくりや雪に見立てた白い綿。そのどれもが、クリスマスツリーを綺麗に見せている。頂点の星も忘れずに付いている。
「あとは、部屋全体の飾り付けを終えたらこっちは終わりだよ」
「リュメルの方はどうなの?」
「それが、レイド達が一向に帰ってこなくて、進まないんだよ」
「「あー。なるほどね。ミルの悪い癖が出ちゃったか」」
「悪い癖?」
聞いてみると、ミルさんは買い物に出ると色んな物に目が行くので、買い物が全く進まないんだとか。
「それは、悪い事をしたな。レイド頑張ってくれ」
それから待つ事数十分後。
「ごめん。お待たせ!!」
レイドが息を切らせて帰って来た。ミルさんは居ない。
「あれ? ミルさんは?」
「途中で来たここのメイドさんに変わってもらって、俺だけ買い出しして走って帰って来た。物は完璧に揃えたから大丈夫」
レイドの顔を見たら分かる。物凄く疲れてる。
「レイド。お疲れ様。これでも食べてゆっくりしてて」
「ありがとう」
僕は少し気になった事があったから、クリスマスパーティーが終わってからミルさんに「なんで、学園のある街の方で買い物をした時には普通に帰って来たの?」と、そしたら、「あっちはもう全部見たから」と、言っていた。
そして、食材が到着したので、残った本料理を全部終わらせて遂にクリスマスパーティーが始まる。
「みんな。今回は急遽開催したクリスマスパーティーに参加して頂きありがとうございます! 本日は僕とリュメルで腕に寄りをかけて作った料理の数々を、みんなと楽しく話しながら食べられたら良いなと思います。それでは、皆さんグラスを持って下さい。かんぱーい!!」
そして、クリスマスパーティーは始まり、中盤に差し掛かったところで、メイさんとイヤさんが女性陣を集めて部屋を一旦離れた。
「なんだろうね?」
「さぁ? 分かんね」
それと同時に、クロとウミが帰って来た。
「ご主人、帰ったぞ」
「あ、お帰り」
「頼まれた物は全部買って来たぞ」
「うん。それじゃ、それは僕の部屋に置いておいて。置いてきたらクロとウミも一緒にパーティーやろうね」
「分かった」
「うむ」
そして、それから数分後。ミルさん達が帰って来た。綺麗なドレス姿に変身して。
「ど、どうかな? 綺麗……かな?」
みんな、少し恥ずかしそうに顔を赤らめて、でも、嬉しそうな表情で笑いかけて来た。
「ゔ、俺は幸せだ」
なんか、レイドは感極まって泣きそうだけど、それは無視して、僕は素直な感想を述べる事にした。
「皆さん。とても、とても綺麗で似合ってますよ!! とても綺麗……です」
もうほんと、語彙力が無くなるくらいみんなはとても綺麗だった。可愛いではないのだ、とても大人っぽくて綺麗だ。
ミルさんは、金色の髪を纏めていてポニーテールの様な髪型に、青色のドレスに身を包んでいる。
メイさんとイヤさんは双子だけあって髪色も緑で、ピンク色のドレスに身を包んでいる。
リュメルは、紫の髪色に合う白と水色のドレスに身を包んでいる。
そして、僕が語彙力の無い言葉で褒めると、みんな嬉しそうに笑って席に着いた。
「これね。メイとイヤの家にあるドレスを持ってきたんだよ」
「あー、だから異様に遅いなとは思ってたんですよ。飾り付けのおもちゃだけだったらあんなに時間かからないよなって」
「どう? みんな合うでしょ?」
「はい。皆さんとても似合ってますよ」
「「ありがとう」」
少しの沈黙が流れたあと、隣でレイドが、ケッ! ケッ! と、何やら変な声を出していた。
「リア充め。爆発しちまえ」
と、小さい声で言っているので、耳元でこう言ってやった。
「レイド。あの4人のドレス姿は他の学園の人達は一生見られない。それを、見られるってとても幸運だよな。それに、『高嶺の花束』とクリスマスパーティーってだけでリア充じゃないか?」
と、言うと、
「確かに!!」
と、なんか納得してくれた。
そして、クリスマスパーティーが終盤に差し掛かった所で、僕は席を立った。
「あれ? どこ行くの?」
「すぐ戻って来ますね」
それだけ言って、僕はクロとウミに買い物を頼んでおいたものを取りに行った。
「よし。ラッピングもされてるね。うん、戻るか」
それを魔力袋に入れて戻る。
「お帰り。何しに行ってたんだ?」
「料理も大分食べ終わって来たし、クリスマスパーティーって言ったらやっぱりこれでしょ!!」
そう言って、魔力袋から僕はプレゼントを取り出した。
「「「「「プレゼント!?!?」」」」
「そうです。みんなへの感謝の気持ちです。受け取って下さい」
そして、一人一人にプレゼントを渡して行く。
「え? 俺の分もあるのか?」
「あたりまでしょ。親友なんだからあって当たり前だよ」
「ありがとう。イサミ」
「開けても良い?」
「もちろんです」
それぞれ、開ける。
そこには、僕が選んだきっと似合うだろうなと思った身に付ける装飾品だ。
「わぁ!! イサミありがとう!!」
「「イサミくん! どう!?」」
早速、メイさんとイヤさんが付けてくれた。
2人に渡したのは、双子でペアになっているネックレスだ。
「とても似合ってますよ!」
ネックレスは、黄緑色のガラスの中に太陽と月が描かれている。
リュメルに渡した物は、魔石が組み込まれている金色のブレスレットだ。その魔石には浄化のスキルが刻まれていて、任意のタイミングで手や腕を綺麗にしてくれる。
自分のお店で朝早くから料理の仕込みをやっていて、これがあったら手を洗う手間を省けるかな? と、思ったのだ。
「……ありがとう」
そう言って、リュメルは嬉しそうに両腕につけたブレスレットを撫でていた。
ミルさんに渡したのは、雪の結晶の形が先に付いているネックレスだ。
「どうですか?」
「とても、嬉しい」
「良かったです」
最後は、レイドだが、特にこれと言って思いつかなかったが、赤い髪に赤い眼で、黒い服を好んで着ているので、シルバー系の物が良いかなと思い、ブレスレットをあげた。
「これ、俺が欲しかったやつ!!」
「あ、ほんと? 似合うと思ったんだけど、良かった」
「まじか。まじで嬉しいぞ!!」
プレゼントを渡し終え、クリスマスパーティーは終わりを迎えた。
「みんな。夜も遅いから今日は泊まって行ってください」
「「「そうする(わ)」」」
「お泊まり」
「……お泊まり」
なんかみんな乗り気で良かった。
そして、クリスマスは終わりを迎えようとした時、外の景色に変化が起きた。
「あ、雪だ」
「え? 雪!?」
僕は後ろにある大きなドアを開けて、外に出る。
「う、寒い」
「わぁ、綺麗!」
「これが雪か、初めて見た」
この辺は雪が降るような気温になる事は無い。
まさに、
「クリスマスの奇跡だ」