お稲荷さん〜1〜
次の日は学園全体がお休みだ。来週は剣のみでの戦いがあるのでその準備を行うようだ。
そして、僕は今学園の食堂にやって来ていた。あるものを貰いに来たのだ。
「誰か居ませんか?」
「おや? 学生が何してるんだい?」
「そのですね。この間ここに来た時に気になるものがあったんですよ」
「気になるもの?」
「はい。あの、油揚げってありましたよね?」
「あー、あるぞ」
「本当ですか!? どれくらいありますか?」
「ちょっと待っててな」
食堂のおばちゃんは一つの箱を持って来た。
「ほら、こんなにあるぞ」
その箱は、エナメルバックがまるまる一つ入る程の大きさだった。
「こ、こんなにあるんですか?」
「そうよ。仕入れてるのは良いんだけど、あまり人気じゃないんだよね。偶に、気に入って毎日食べる新入生も居るけどね」
「そうなんですか。あの、これ貰えませんか?」
「これを? 何に使うんだい?」
「料理です」
「いや、うん。それは、分かってるさ。どんな料理かを聞いているんだけど」
「あぁ、お稲荷さんです」
「オイナリサン? なんだいそれ? 今は誰も食べに来ないし、ここで少し作って行かないかい?」
「え? 良いんですか?」
食堂のおばちゃんの提案はもの凄く嬉しい。どこで料理するか決まってなかったんだよね。
「もちろんだよ。けど、それには一つ条件がある」
「条件ですか?」
「そうだよ。まぁ、ついでにやったら出来る条件だよ」
「そ、それは一体……」
「なぁに、ただ、そのオイナリサン? って言うやつ、私達にも作ってくれないか? どんな料理か気になるんだよ」
「あぁ、もちろん良いですよ。それで、何人分ですか?」
「えっと、3人分だね」
「分かりました!」
そして、僕のお稲荷さん作りが始まった。
「まずは、出汁を作ろうかな」
今回の出汁は、昆布と鰹節を使う。
「まずは、昆布と鰹節を取り出してっと」
「それはなんだい? 見た事ないね」
「こっちの、黒くてひらひらしてるのが昆布です。こっちの硬いものは鰹節です。これからは良い出汁が取れんですよ」
ボールに水を入れてそこに昆布を浸す。
「これは、大体3時間ぐらい浸して戻します。まぁ、これは既にやってあるものがあるのでこれを使います」
魔力袋からそれを取り出した。
「で、これを強火で煮出して行きます。着火」
この世界は、料理が少し進んでいるようで、とある物も置いてあった。
「これ使うかい?」
「!? 使います!!」
そう、温度計があったのだ。
「よし。後は、70度になったらそれをキープしながら10分煮出して行きます」
それから10分後。
「一旦火を消して、昆布を取り出します。そしたら、取り出した昆布を置いておいて、こっちをもう一回強火に掛けて。着火」
食堂のおばちゃんは、それをずっとメモしている。
「そしたら、このアクとぬめりを掃除してっと」
お玉でアクやぬめりを取り出して、水の入ったボールにお玉を移動させてアクとぬめりを掃除する。
「それで、この綺麗になったやつを火を止めて、鰹節を入れます。今回は、大体4リットルなので、この鰹節は4掴みほど入れます。そしたら、これを2〜3分煮出して行きます」
それから3分後。
「これをこせば……」
「「「おお!」」」
いつの間にか、おばちゃんが増えている。
「凄い綺麗」
「これで、出汁の完成です」
「これ、少し舐めてみていい?」
「はい。どうぞ」
3人に少しづつ出汁を舐めさせると……
「う、美味い!!」
「こんなに美味しいのはじめて……」
「はぁ、最高……」
と、好評だった。