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03.分かっていない




敵国の王女に土下座された。

初対面がそれだったものだから、扱いに困っている。その後の発言も、


「私でよければじゃんじゃん利用しちゃってください!」


と捨て身とも言えるものだったり、


「政略結婚だと貴方の印象が悪くなるかもしれません。私が一目惚れして無理矢理迫ったと噂を流しましょう」


元々支持されていないから、と意気揚々と自虐に近い提案までしてくる。

ただ何故か初対面から自分に全幅の信頼を寄せてくるので、俺の言葉は信じるようだ。だから、本当に同盟を了承してくれるか、と再確認された時に大丈夫だ、と伝えた。


「よかったぁ……」


強張っていた表情が緩み、安堵いっぱいに笑った。急に国民の命を背負った重圧が負担だったんだろう。体当たりなやり方しかできないようだが、その重みを理解しているなら学だけある者よりずっとマシだ。

同じ国を背負う者としてそう考えるのとは別に、初めて見た笑顔にとくりと胸が鳴った。

困難だった同盟話があっさりと舞い込み、願ったり叶ったりだ。国民は戦争してでも、と意気込んでいたが折角豊かにした国力を削るようなことは避けたい。戦争は得るより失うものが多すぎる。

足手まといだとは思うが今からでも勉強したい、と彼女は諸侯の説得に同行を希望した。まだ父の喪に服したいのではないかと気遣ったら、もう充分すぎるほどに泣いたからと返った。

説得のため各地を回ると、彼女は初めて自身の眼で見る自国の様子に心躍らせながらも、俺に政治的観点を問うてくる。女性には面白くないだろう俺の説明を、凄いと言って興味津々で聞くものだから、こちらまで嬉しくなった。

それでも会議の際は、流石に難しすぎるようで、時折舟を漕ぎそうになっては慌てて表情に力を入れる様子が可笑しかった。

双子は忌み子と捨てられた自分を拾い育ててくれた前王のため、居場所をくれた愛する国のため、と懸命に国を盛り立てきた俺は初めて、隣に誰かがいるだけでこんなに安らぐのだと知った。


「これからも俺の隣にいてほしい」


心からの懇願を伝えると、彼女は表情を輝かせた。


「ネームバリューしかない私でもちょっとは役に立っていますか!? やったぁ!」


欠片も伝わっていない様子にがくりと肩を落とす。彼女にとって俺は理想の為政者でしかないらしい。


「道程は遠そうだな……」


「はいっ、皆さんの説得頑張りましょう!」


彼女は笑顔で励ましてくれた。

とりあえず、彼女が笑顔でいれる国作りから始めようか。




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