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02.冗談だろう




なんて茶番だろう、と思っていた。

父親と形だけ国王の葬儀に参列していた俺は、何の感慨もなく棺の前で泣き臥せる王女を眺めていた。可哀想だ、なんて同情も湧かなかった。

俺の忠義はここにはない。敵国の王にある。だから、この葬儀が白々しい茶番にしか見えなかった。

王族の分家である俺の家は、交通の要になる街が領地だ。つまりは、流通の要の街であり、外交の矢面になる場所だ。それだけ厄介事が舞い込む。

数年前に起こった外交問題で家が窮地に立った時、支援要請をしたのに自分たちで処理しろと俺の家を見捨てた。代わりに窮地を救ってくれたのが、敵国の王だった。

それをきっかけに、敵国と行き来することになり敵国の王の資質を目の当たりにした俺は、彼に忠誠を誓った。

この国は、敵国の王がこちらに戦争を仕掛けようと声をあげる国民を宥めて、和平交渉を画策してるなど露知らず敵国を見下している。

俺は戦争してくれた方がいいと思っている。こんな国、潰れて当然だ。

王子がいたが何年も前に行方不明になり、亡くなったとされている。国王がいなくなった今、残っているのは使えない姫一人。国内の結束も弱い今、崩すには好機だ。


あの人も、もう抑えていられないだろな。


敵国の国民が声高になるのは必至。戦争の気配を、この場のどれだけが気付けているのだろう。

そんなことをぼんやりと考えていたから、静かになったことに気付くのが遅れた。先程まであった耳をつく泣き声が止んでいた。

妙に思っていたところに、王女が敵国の王との面会を宣言したもんだから、俺は目を剥く。

王女は一点を見つめ、真っ直ぐこちらの方に向かってくる。


「お願いします。敵国の国王との面会を取り付けてください!」


胸倉を掴まれ、至近距離で凄まれて、やっと俺を見ていたと知る。


「な……なんで、俺に……!?」


初対面の俺に、何の迷いもなく向かってきた。俺が敵国と通じているなんて知らないはずなのに。


「お願い!」


もう互いの顔が判別できないぐらいに攻め寄られて、念を押すように懇願される。その気迫に、俺は頷くしかなかった。

敵国の王に話すと面を食らいながらも、王女を自分の国に招くことを了承した。

俺は俺で、王女が護衛騎士と仲介の俺だけというほぼ単身で敵国に乗り込んだことに面を食らった。頭の弱そうな女だと思っていたが、別の意味で馬鹿なのだろうか。


そして、あの土下座だ。


もう一周回って可笑しくなった。

しばらく付き合ってやろう。




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