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僕の在り方

【名称】

ダンジョンコア。


【分類】

無機物モンスター


【等級】

上級


【種族スキル】

『採掘』『錬成』


【外観】

単色で艶のある直径1m程の球体で、空中に浮いている。

速度は遅いが自発的な移動が可能。


【生態】

ダンジョンコアは魔力が潤沢な地脈の上に極低確率でスポーンする。

スポーンしたダンジョンコアは『採掘』スキルを使って自らの傍に洞窟ないし落とし穴の形態でダンジョンを構築し、『採掘』スキルによって採取した資源を元に『錬成』を行う事で、様々な装備、魔道具、モンスターを自発的かつ半永久的に生成する。

時間が経つにつれてダンジョンはより深く複雑になっていき、使役するモンスターも増え、ダンジョンの攻略難易度は上昇する。


【素材】

コアそのものが魔道具、魔術兵器の重要な触媒になる。

希少素材であり、高額で取引される。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


この世界の人間にとって、ダンジョンコアとは資源だ。


どんな小さな欠片であっても各種魔道具の素材になり、大きな欠片が確保できれば有事の戦略兵器や平時の建築重機の欠かせない動力素材になる。


故にダンジョンコアは採掘を駆使してダンジョンを拡張し、錬成を用いてモンスターを生成して自衛の為の戦力とする。


しかし、それは諸刃の剣である。


ダンジョンコア側から見れば、どれだけの戦力が必要十分なのか解らない為、モンスターは作れるだけ作る。


錬成そのものや、錬成したモンスターに必要なエネルギーは、大地を流れる魔力を吸い上げて調達する為、ダンジョンコアの戦力増強はほとんど無尽蔵に続く。


それに対してダンジョン自体の物理的な容量には限界がある為、過剰に作られたモンスターはそのうちダンジョンから溢れ、《スタンピード》と呼ばれる災害となって顕在化する。



実際のところ、人間の多くはダンジョンコアの希少性よりも、このスタンピードを未然に防ぐ目的でダンジョンコアを破壊、採取している。

つまりダンジョンコアが自衛の為に押し進める戦力の拡大行為が、巡り巡ってダンジョンコアを破壊する大義名分になってしまっているのだ。


ダンジョンコア自体は年間20程度生まれるのに対し、今現在10層以上の大規模ダンジョンとして残っているのはこの世界にたった7か所。


それらのダンジョンが残っているのは、スタンピードが発生しないように間引いている人間と、ダンジョンのモンスター生成頻度、及び掘進速度が偶々釣り合っている為であり、どのダンジョンも今なお綱渡りである事に違いはない。


……これだけ問題点が山積みであるのに、なお無尽蔵な戦力増強に注力するのは愚の骨頂である。


予備知識のない(少ない)他のコアはともかく、幸運にも莫大な知識を持って生まれた以上、僕はもっと安全な手段を取りたい。



ゴブ太郎とゴブ次郎の墓に心の中で手を合わせ、

遠からず訪れるだろう再度の襲来に備えながら、そんな事を考えていた時。

錬成ウインドウに追加されたそれが目に入った。


錬成

■人体: 50kg/102.1kg → ホムンクルス


一次合成

□ホムンクルス + トレント → ホムンクルス・エルフ

□ホムンクルス + ゴーレム → ホムンクルス・ノーム

□ホムンクルス + カッパーゴーレム → ホムンクルス・ノッカー


人体を資源にする…ホムンクルス


・・・・・・・・・・・・・・・!


その時ダンジョンコア(ぼく)に電流奔る。


-- よし。これで行こう。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



-- 僕が目指すのは交易だ。


「ゴブ?」

「ゴゴゴ?」

「ゴブブ?」

「ブゴブ?」


僕の眼前にいるのはゴブ三郎、ゴー太郎、ゴブ四郎、ゴブ五郎の四人。

我がダンジョンの現総戦力である。


僕と彼らは一蓮托生。

ダンジョンコアとしての基礎知識は取り戻せたものの、事はダンジョンの安全保障に関する話である。

彼らとの意見交換は有意義なはずだ。



-- まぁピンと来ないよな。

-- 詳細を話そう。


-- 今このダンジョンでは銅が産出している。

-- それに僕の『錬成』なら、本来建材や素材に向かない枝木や砕けた石も素材として利用できる。

-- これは人間には真似できない、ダンジョンコア特有の能力だ。

-- この能力を人間社会に売り込み、僕のダンジョンがスタンピードを起こすような危険なダンジョンではなく、寧ろ保全したほうが得だと交渉する。

-- つまり武力の拡充ではなく、経済的利益の供給によって安全を確保するんだ。


「|ゴブ、ゴブブゴブブブゴブーブブブゴブブ?《でも、誰が人間と交渉するんですか?》」


「|ゴブブブブブ、ゴブブブブゴブゴブゴブゴブブブブゴブブゴブ。《私達じゃ、交渉の余地無く殺されてしまいます》」



-- そこも考えている。

-- ちょっと前に侵入してきた不埒者がいるだろ。

-- あいつの死体を使い、交渉を行うホムンクルスを錬成する。


-- 人間側にはホムンクルスが何らかの技術でダンジョンを利用しているように見せれば、少なくとも僕のダンジョンを危険視するようなことはないだろう。

-- 何せ利用者がいるんだからな。


「|ゴブブ…、ゴブゴブゴブ、ゴブゴブブゴブゴブブゴブ《ふむ…、そうなると、そのホムンクルスが交渉に向いた性格がどうかとても重要になってくると思います》」


「|ゴブ。ゴブゴブブゴブゴブゴブゴゴブブゴブ《同意です。私たちなどはそういった難しい思考は種族的に出来ませんので、私達と同程度の性格なら交渉は同様に難しすぎて出来ないかと。》」


-- なるほど…。

-- ホムンクルスと聞いてそれなりの知性がある物と思い込んでたが、確かに適正の問題はあるか…。

-- よし、ならまずホムンクルスを錬成して、その考えを聞いてみよう。

-- どのみち死体は早々に処理しないといけないわけだし。


「「ラギャー」」


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