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プロローグ

気がついた時、一番に目に映ったのは狭苦しい洞窟の内壁だった。

視界の7割は土らしきもので占められ、10mほど先に屋外であろう、森の木々が見える。

視界の右上には半透明の地図のようなもの。

左下には同じく半透明で左上に「錬成」と書かれたゲームウィンドウのようなものが見える。

視界を動かすと右上の地図、左上のウィンドウもそれに追従して動く。

HMDヘッド・マウント・ディスプレイのようなものがついているのかもしれない。

違和感こそあるが、我慢できない程ではない。


-- ここ…どこだ?こんな所来た覚えは…。


周囲を見渡しながら僕はここに来た経緯を思い出そうとする。


しかし何も思い出せない。

ここに来た経緯だけでなく「何もかも」思い出せない。

自分の名前、故郷など、生まれてから培ってきたはずの何もかもが。


自分自身に膨大な知識があること、その知識から物を考える知性がある事は理解できる。

しかし自分自身に関する事、また、その知識を如何にして得たのかの「経験が」そこにはなかった。


物理学、数学、論理学、神秘学、工学、熱力学、経済学

文学、生物学、化学、言語学、歴史学、哲学、考古学

軍事学、人類学、民俗学、地理学、天文学、医学、薬学etc…


あまりに膨大で底知れない量の知識に戸惑いながらも、その知識の海を揺蕩いながら僕は自身の現状を少しずつ理解していった。


まず僕はどうやら人類では無いらしい。

知識の中にある人類の姿形とはあまりにかけ離れているらしく、手足はおろか生物学的に欠かせないであろう胴体すら自分には見当たらない。


もしこれが事故か何かによる四肢欠損であったとしても、そこには幻肢症状が見られるはずだ。


それも見られない以上、僕には元々四肢も胴体も無いと考えるべきだろう。

視覚がある事から頭部はあると思われるが、鏡やそれに類するものが見当たらないので確認は出来ていない。


持っている知識は人類のものであるが、僕自身はなぜか人類の枠組みの中にはいないらしい。



次に僕が今いる場所についてだが、僕の知識にある21世紀初頭の地球上ではない可能性が高い。


今の僕には視点が空中に浮いているように見えている。

だいたい地上から1m程の高さだろうか。

仮に僕を何かしらの方法で釣り上げていると仮定しても、僕自身が重量感を一切感じないなんてことはあり得ないはずだ。

しかも頭で念じるだけで視界が自由に動く。

これを実現する技術は、少なくとも僕の知識にはない。


所謂バーチャルリアリティの世界である可能性も考えられるが…。

いずれにしても、今見えているここは僕の知識がそのまま適用できる世界ではないと考えたほうがいいだろう。


人類の知識があるのに僕は人類でなく、地球の知識があるのにここは地球ではない…。

これは一体どういう事なんだろう?



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