知識のつけたし
リゼルはその日から学園が終わり次第、森に出向く日と魔王軍第3部隊の指導に行く日交互にしていた
この日放課後では黒綠の森で行うサバイバルのグループごとに作戦会議や物資の買い出しリストを作っていた
「リゼル。あの森なら何が一番必要だ?」
話し合いをしていた彼らはアスターの声に耳を傾けた
リゼルの前には訓練内容が書かれた紙が十数枚手書きで積み上げられている。全体の強化と個人個人の弱点と改善方法を書きながら
「そうですわね……あの森でしたら手前の方は魔物を寄せ付けない魔術が刻まれている狭域でも十分ですわ」
「だが、奥に行くなら広範囲で強力な物が要るな」
「えぇ、それに野宿しやすい場所の把握も必要ですわ」
二人は少し大きめに話しクラスメイトが1週間過ごせるぶんの予備知識をつけ足すためにわざわざ声に出していた
「後、水の場所も確認しないとな」
「水がなければ生きていけませんものね」
リゼルは彼の言葉に同意を示しクラス人達が尊敬している彼が提案しリゼルは何も知らないため同意してるように見せかけた。もちろんアスターが知らない内容は、紙に書き彼に見せる
クラス中知らない内容に驚きざわつくが、彼らはそれすら気にすることなく話を進めた
リゼルは、何かしらを紙に書きアスターへ向けると
目を見開き彼女の方を見て、リゼルがうなずく
「……そう言えば、街に近い手前に出てくる魔物は高いところは見えないらしい」
「初めて知りましたわ!では、手前の方は木上にて休む方が安全ですわね」
「ああ。だが、奥に行くと高いところでも見付かるから気を付けないとな」
「そうですわね」
アスターは、始めからリストアップされていたものを担任に渡し回りが再び話し合いを始めた。
リゼルは紙の束を整え
「では、アスター様お先に失礼します」
彼は通りすがりに彼女だけに聞こえる声で
「無茶をするなよ」
「……はい。承知いたしております」
とだけ返事を返し教室を出ると真っ直ぐに迎えの馬車へ乗り込み魔王軍第3部隊の訓練場に向かった
訓練場では、一糸乱れぬ動きで基礎能力の向上を行っていた。彼らはリゼルに気づくなり彼女に駆け寄り整列した
「皆さん中々鋭い剣さばきでしたわ。本日はこれをお届けに参りました」
リゼルが持っていたのは、授業中に書き上げていた1週間ぶんの全体訓練を1日後とにメニューを変えた冊子と個人個人弱点と改善が記された紙を隊長に渡し困惑する彼らに
「明後日から学園の行事で黒綠の森で1週間のサバイバルに行って参りますので、冊子に記した内容を行ってください」
「それは了解しましたが……リゼル様。黒綠の森はいま繁殖期で、あの学年の方々では………」
リゼルは隊長の言葉にうなずき
「難易度が上がっていることは承知していますわ。そして彼らでは死ぬ確率も」
「要らぬことを申しました」
リゼルは優しく微笑むと
「いいえ、隊長殿のお気遣い有り難くちょうだい致しますわ。そして、今回の貴殿方のメニューには5人ずつパーティーを組み黒綠の森で繁殖している魔物に関するレポートを提出していただきます」
詳しくはそちらの冊子に と彼女が言うと彼はら苦笑いを浮かべ
「俺達の強化プラス生徒を影から護衛しろってことですね」
リゼルは満足げに微笑み
「総司令官様から許可は頂いていますので、軍事物品も使用可能ですわ」
隊長である彼は彼女の話が終ったと理解し隊員を各自の訓練に戻し
「お聞きしたいことが」
あら珍しく質問でも?
「何故、あの時───」
「リゼル」
今日は珍しいことが2度もあるのね
リゼルは声がした方へ振り向き
「お父様お疲れ様です」
「ああ、話中だったか?」
「ええ」
彼女は隊員の方を向き彼に話すよう促すと
「いいえ。私はこれで失礼します」
彼は隊員の方へ戻っていった。その姿に珍しくもキョトンとした表情を浮かべたがリゼルは、父の方を向き
「お父様が私に会いに来られるだなんて何かありましたか?」
「用事と言うわけではないが………」
父は言葉を濁しリゼルをエスコートしながら帰宅用の馬車に乗り込み盗聴を防ぐため馬車内に結界を張るなり
「黒綠の森に行くそうだな」
「はい。学園の行事だそうです」
「あの森の反対側のふもとは人間の世界との境界線だと言うことも」
「はい。存じております」
ザイゼルはリゼルを心配そうに見ながら
「あの森に人間が度々入り込んでいる。それを知った古狸どもが、これを気に人間どもに戦争を吹っ掛けようとしてる」
リゼルは、気付かれないようにため息をはき
「では、今回のサバイバルがあの森になったのは彼等の思惑。そして、入学したの彼らを人間に殺させる 又はその逆を行わせきっかけを作るつもりですか」
娘リゼルと父ザイゼルが行おうとしていることはさすがは親娘だと言うように一致していた