魔物と魔族
学園では朝から彼らのとっさの判断と勇姿を称える人盛りが隣の席ではその話で盛り上がっていた。リゼルはその光景を片眼に来週開催される大会を思いため息をついていた
嫌だわ。よりにもよって魔物が大量発生する黒綠の森で1週間のサバイバルですなんて!
1週間後までにグループを作り黒綠の森で生活しなければならない。一人行動も可能だが、基本数人グループで行動する方が魔物相手に遅れをとらずにすむ
ベルが鳴るとともに騒いでた彼らは席に戻り、担任が
「知ってると思うが、本日から黒綠の森についてやサバイバル等について説明します。そして、点数となるものについての詳細が書かれた紙を配るので各自で確認してください」
クラス中が再度ざわつき
「なぁ、アスター俺達と組まねぇ?」
「いいえ、アスター君は私達とよ!」
「確実にクラス点を稼ぐなら俺達と組んだ方が稼げるぜ!」
「なによ!───「みんなごめんね?僕はこの子と組んでみたいんだ~」」
彼により我関せずで魔王軍の訓練について様々なことを書き込んでいたリゼルは、彼が肩を抱いて引っ張った事に対応出来ず胸元へ倒れてしまった
ざわめきだす彼等をよそに、彼女の耳元で
「黒綠の森ぐらいお前なら簡単だよな?」
疑問系だが有無を言わせない圧に、リゼルはため息をつき
「巫山戯るのも大概にしてくださいな。あなた様はご存じないと思いますが、あそこには解明されていない物が大量に有るのですわ」
そんな危険なところ魔力を抑えた状態で参加できるわけがないと暗に伝えるが
彼は笑みを深め
「お前は魔法だけじゃないはずだが?あいつの娘が魔法一筋。魔法以外何も使えない………何て事が有るわけないよな」
彼は暗に『出来ないと言うならザイゼルの教育に問題がある。再度全てにおいての教育をし直すぞ』と言ってきた。リゼルは苛立ったが、令嬢だと言うことや相手が魔王だと言うのとを忘れることなくあくまでも冷静に
「うふふ、お父様がそんな生半可な教育をするとでもお思いですの?魔物の群れごときに遅れをとる何方か様とは違い一人で対処できますわ」
彼女は笑みを見せながら全員に聞こえるように
「私は、せっかくですから彼が言ったように組ませて貰いますわ」
と言い再度ざわつき鋭い視線を完全にスルーすると彼の腕から離れ
「仕事を完遂するのが私の美学ですわ」
と微笑むと彼の顔は徐々に青褪め
「ま、まさか………俺の事が!?」
リゼルは、更に笑みを深めると
「さぁ、どうでしょう?私には分かりませんわ」
「だが、仕事だと!!」
「ふふふ────ですわ」
ちょうど肝心なところでベルがなりリゼルの声はかき消された
「リゼル、今なんと言った?」
彼女は申し訳なさそうに眉を寄せ
「このあと直ぐに向かわなければ行けないところが、ございますので失礼致しますわ」
「おい!待てっ」
リゼルの手を掴もうとするが、クラスの人らにより阻まれアスターは身動きがとれず彼女を逃してしまった。囲まれ、鍛練を一緒にやろう と声をかけてくる彼らの対応をアスターがやっている頃。リゼルは、静かに迎えの馬車に乗り憂鬱な気持ちを押し殺し窓越しにいる従者に
「帰宅しだい森へ向かいまわ。実力者重視でお願い致しますわ」
森へ行くと言う言葉に反応した従者は
「かしこまりましま」
返事を返してから思案する様に考える素振りを見せ、懐から黒いラインの入った笛を吹いた。『ピ~~』と言う音と共に空には3羽の烏が笛を吹いた彼の頭上にき一羽だけが彼が伸ばした腕に乗った
さすが鳥族の次期当主だけあるわ
リゼルは彼と烏を見ながら感嘆していると
「この光景を見たのは初めてですか?」
と笛を吹いた彼ではなく、烏がこちらを向きながら話しかけてきた
「えぇ、今まで通信鳥しか見たことがないわ」
内心驚愕していたがリゼルは表情に出すことなく返答し
これは魔物ではなく魔族中の鳥族本来の姿ね
「おや、驚かれないのですね?」
烏が目を丸くしている姿が可愛く見えたが、尾首にも出さず
「えぇ、使役されている魔物ではなく魔族なら驚くことは何もないわ」
烏──彼は、窓の縁に飛び乗ると羽で器用に礼をすると
「リゼル様、この様な姿で申し訳ございません。お初にお目にかかります。私は、鳥族 現当主 シムラクルム・ローム・ニゲル・アスフール の甥に当たります 《アトモスフィール・ローム・ニゲル・ネーフ》 と申します。リゼル様にお会いできて光栄にございます」
「アトモスフィール様ですね。改めてご挨拶をさせていただきますわ。私は、ザイゼル・レ・マルキシオス の娘 リゼルレディシオ・ギネカ・マルキシオス と申しますわ。以後お見知りおきを」
カーテシーが出来ない変わりに頭を少し下げお辞儀をした
彼はチラッと後ろを振り向き
「色々とお話をしたいところですが、彼が怒るので失礼致します」
「ええ、お願いいたしますわ」
彼─アトモスフィールは頷いてから空にいる魔物の鳥を先導しながらリゼルの屋敷へ飛んでいった