友情
滞在2日目、予定通り昼からソロアスタ-とアルペシル国王の会談が行われた。護衛は共に馬車に乗っていた二人がそのまま陛下の護衛につきザイゼルは宰相としての仕事国の視察へ向かいディナン、アベック、レイナはクラスメイトと合流し人間の生活を体験したり冒険者登録を行いクエストをこなし始めた。また、魔王国に助けを求めに来たプサカス・ストラテーゴスは久しぶりの仲間達と過ごさせるためリゼルは護衛騎士である彼に休暇を取るように命じた。そのリゼルはと言うと・・・
「皆さん、ごきげんよう」
「ごきげんよう、先生」
「本日は体験入学として魔王国からお越しのリゼル様がお越しですわ。皆さん仲良くしてくださいね」
リゼルは扉の前にいる従者に扉を開けてもらい教壇に上がるなり
「ごきげんよう、皆様。私は魔王国から参りましたリゼルと申しますわ。本日だけですが仲良くしてくださいね」
見本のような美しい発音と礼儀作法に誰もが感嘆を漏らしていた
リゼルは従者に案内された席につくとその従者は後ろの壁に並ぶ他の従者の隣に並んだ
「では、本日の授業を始めますわね」
リゼルがいるところは令嬢が通う学校だ。本来ならベルゼスト学園のリゼルがいるクラスの女性が通うはずだったが言葉と作法をマスターしきれなかった為リゼルに出向くよう指示が来た。その為本来なら5日間通うはずだった日程を1日に減らしリゼルが行わなければならない事が分刻みになったのは言うまでもない
この学校では1人の令嬢につき従者資格をクリアした者が学園に雇われ卒業するまで自宅または寮までの送り迎えや学校内でのお世話など全てその従者が行う。勿論、食事の配膳もメニューすらも栄養や令嬢の気分に合わせて取りに行っている
リゼルは、代わり映えのしない授業を表情を変えることなく教材に書き込みその隣に置いてある自国語で書かれた書類にサインや要項がハッキリしないものを再提出印を押し捌いていた
「リゼル様。この問題、分かりますでしょうか?」
問78─5を示してきたので、従者に回答用紙を持たせ提出しに行かせた
「・・・正解ですわ。次の問題に移りましょう」
こんな感じのやり取りが行われ、ようやく休憩時間になったがリゼルには休憩している余裕がなく次々送られてくる書類を返答しては送り返し常に机の上には書類が積まれていた
「リゼル様、少しお話よろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「何故あの問題がお分かりになられたのですか?」
「あらかじめ予習をしていたのでここの卒業資格ぐらいは取れますわ」
「名乗ってはいなかったですよね。私の地位は侯爵家であるクロム・リリアですわ。貴女のお名前をフルネームで教えてくれるかしら?」
リゼルは書類を綺麗に片付けると従者が持ってきた紅茶と焼き菓子に手をつけながら、話し掛けてきた事でこの学年では彼女が一番地位が高いのだろうと思った
「ふふふ。では改めまして」
リゼルは扇子で口元を隠しながら
「私、宰相である父ザイゼル・ギネカ・マルキシオスが娘リゼルレディシオ・ギネカ・マルキシオスと申しますわ」
「そう!」
彼女達はギネカ・マルキシオスが魔王国ではどの地位か分からないが宰相と言うことから自分と同等の侯爵か伯爵家位だろうと辺りをつけた
本来ならリゼルの方が地位が上なのだがリゼルはあえて言うことなく平然としていた
「次の教科は移動教室ですわよ!私がお教え致しますわ」
「ふふふ。申し訳ないのですが、お願い致しますわ」
「ええ!任してくださいませ!」
なやんやかんやでリゼルは体験入学して初の友達を手にいれた
「本日の音楽、私とペアを組みませんか?」
「良いのですか?普段組まれている方がおられるのでは?」
「彼女には伝えてありますわ」
「ては、お願い致しますわ」
ここでは、音楽は二人組を作り与えられた楽曲をその日の内に合格しなければならない。そんな二人にあたえられた曲は人間達が住む国では最高難度と言われているとある有名な曲だった。この曲は数多な楽器が重なって出来る曲で2人では到底合格など貰えるはずがない曲だった
勿論、リゼルの相方リリアは抗議しに行ったが
「出来ないのなら不合格にします」
と言う言葉だけ残し去っていった
「こんな嫌がらせを行う方ではありませんのに・・・」
「お気になさらず」
リゼルはあまりにも幼稚な男性教員に苦笑いを浮かべていたが、友好のため来ているなかで失点を残して終わることは許されずとある方法を取ることにした
◆◆◆
「合格、頂けるでしょうか?」
「きっと、大丈夫ですわ」
二人は発表する舞台に上がり各々1つの楽器の前に行き奏で始めた
彼女達が演奏しているうしろではスクリーンに二人が数多な楽器を一つ一つ丁寧に奏でている姿と音が流れ今、奏でている二人の音が重なり本来の楽曲と同じ様な音色を奏でていた
誰もが大きな歓声を上げている中、1人の教師が異議を唱えた
「認めません!」
「何故ですの!?確り二人で演奏しているでわありませんか!」
「今、目の前で行うよう指示したはずですお金に物を言わせこのようなものを作るなど認めることは出来ません」
「では!二人では不可能な曲を課題にしたのですか!!」
「私は、あなた様達に期待していたのですよ。全くもって残念です」
ヒ-トアップする二人に一切言葉を発していなかったリゼルはニコリと微笑み
「では、目の前で今奏でればよろしいのですね?」
「勿論です。二人だけで今、目の前でどの様なことを使っても綺麗に奏でれば合格にします」
「どの様な事を使ってもねぇ」
「ええ。勿論ですとも二言はありません」
「では、ここにいる皆さんが証人で宜しいですわね」
「勿論です!」
リゼルはリリアを先ほどと同じ様に弾くように指示を出し従者にその他に使う楽器を用意させた
クラスメイトたちは常に引き続けなければならない楽器が5種類もあるのにどうするつもりか固唾を飲んで見守った
ゆったり流れるピアノの伴奏から始まり金管楽器や木管楽器、フルート等が合わさって行くなか、誰もが美しい音色に耳を傾け聴いていたが目の前で起こっている光景を見て愕然とした
最後にピアノとフルートで揺ったりと演奏終わった。割れんばかりの拍手と喝采に二人は微笑んで一礼をし
「先生、これではいかがでしょう?どの様な手段を使ってでも今、目の前で奏でれば合格と仰いましたわよね?」
「ねぇ、皆さん」と言うリゼルの問いかけに青ざめその場に崩れたそんな教師から小声で「そんな馬鹿な」と言う呟きと回りからの視線で「合格てす」と宣言したことにより更なる喝采が二人に向けられた
クラスル-ムが始まり
「本日、限りの体験でしたがとても楽しく過ごさせて頂きました。もし皆様が魔王王国へ来られたさいには、国境兵に私の名前を伝えてくださいねお出迎えに参りますわ。それでは、皆さん次お会いする日までご機嫌よ」
「「「「また、会う日までご機嫌よ」」」」
こうして、リゼルと一つ目の仕事が平和に幕を閉じた
◇◇◇
15時前、二つ目の仕事である精鋭部隊との軍部視察のため王城に足を踏み入れ懐かしい訓練所に向かった
「ようこそ、訓練所へ我々は精鋭部隊の者です。そして本日案内を行うのがこの二人今年とある事件で成果を上げ精鋭部隊にスカウトされた」
「インディーと申します」「ヴェールと申しますお嬢様」とウィンクしてきたヴェ-ルに内心苦笑いを浮かべていたが、もう1人いることを思い出しそちらに顔を向けると
「歓迎会以来ですね。改めまして、クレソス公爵子息アジュール・クレソスと申します。以前ここでそのお二人と共に訓練を行っていたので高位貴族がいた方があなた様にご不快な思いをさせないため私が参りました」
「そうですのね。お気遣い感謝致しますわ」
「インディ-殿とヴェ-ル殿も歓迎会での警護お疲れさまでした本日もお願い致しますわ」
「「はっ!」」
同時に頭を下げている二人を見ながらリゼルは嬉しさ半分、寂しさとドキドキが半分占めていた
訓練しているものと案内役3人だけが残った空間に落ちた沈黙。それを破るようにアジュールは施設の案内などを行い魔族と人間の国の行う訓練の違いなどを話ながら談笑を行っていった
「私達が行った試験は地獄でしたよ」
「確かに地獄でした」
「あれはもうやりたくないね」
アジュール、インディー、ヴェ-ルの順に言う地獄を思い出し確かにと内心頷いていた
「早朝から訓練所300周に素振り700。しかも魔力使わずにだからな」
「あの時は死ぬかと思った」
「気を失ったら水を容赦なくぶっかけて10分後に再びだったね」
「良く言うよ!アジュールとヴェ-ル、それにリゼリオの三人は平然と走ってたじゃないか!僕なんて意識ない状態で走ってたんだからな」
「まぁ、俺は山を駆けてたからね」
「私も実家で散々しごかれてたからね」
「・・・・はぁ、リゼシオ何してるかな?」
「何処かに来てるのか?」
「約束の期間なんだがな」
三人が寂しそうに呟いているのを聴きながら昔4人で使っていた部屋へ案内された
「この部屋は私達が使った後誰も使っていないのでどうぞご見学を」
アジュールはリゼルの事を思い出し慌てて言葉を戻しそれに気づいた二人は青ざめていた
それに気づいていたリゼルは懐かしさと今でも心配してくれている仲間達に心を打たれ照れ隠しのように涙を拭きながら笑い声を上げた
「アハハハハ!!」
突然の事に三人ともがリゼルの方を見て呆然としていた
一通り笑い終わったリゼルは
「悪い悪い。あんまりにも気づかないもんでつい笑ってしまったよ」
その言葉使いと仕草でようやく何かに気づいたのか彼らは笑顔を浮かべ
「「「リゼリオ!!!?」」」
「あっ!ようやく気づいた?」
「「「ようやくじゃねえ!!」」」
「なんか可笑しいなと思ったよ!案内をしてるはずがまるで過ごしたことがあるように詳細を知ってるし。交流で来た相手を忘れ昔話に浸ってたと言うのに注意すら入らなかったしな」
「てか、リゼリオって女だったの?」
「そこ?魔族だった方が驚いたけど?」
「あの時は、休暇と何かしら気生臭い事が両国に起こってたからついでに潜入調査してただけさ~」
「じゃあ、あの時僕たちを助けてくれた人達って魔族!?」
「そう、そして僕の部下達さ」
気づけばリゼルはあの時と同じ服装で同じ髪型、体格で彼らと話していた
「待て!じゃあ俺と同じ立場って言うのは・・・」
リゼルはドレス姿に戻り
「改めまして、ソルセルリ-王国 ザイゼル・マルキ・マルキシオスが父 リゼルレディシオ・ギネカ・マルキシオス でございますわ。以後お見知りおきを」
「なるほどな。今回の友好関係を築く事に尽力した家があると聞いた」
「そう、この国の王が願った事を叶えこちらの国の王が願った事を叶えたんだからそれなりの報償を貰っても良いかなってね?」
「それで侯爵でなく公爵に上がったのか?」
「いいや、それは両国の王が願った事。僕が願ったのは交流だけさ」
「「「・・・・・・」」」
裏の主人公がいたことに三人は深くため息をつき
「「「リゼリオ!お帰り!!」」」
「ただいま、みんな!」
こうして再び友に再開できたリゼルだった・・・が、その夜アルペシル王が瀕死の状態だと知らせが届いたリゼルは国王の寝室へ足を向けた




