技術試験
体力測定の終わった次の日は実技試験が待っていた。今日も今日とてため息をつきまくっていた
何でよりにもよって彼等も学園に来るのです!?
同じく隣の席でも頭を抱えている人が一名いた
「……何故だ!!なぜ、魔王軍第3部隊にやつがついてくる!!」
この話を聞いたのは1時間目が終わった後だった
「今日の昼に行われる技術試験は、魔王軍第3部隊と総司令官様が来られることになっています。くれぐれも粗相がないように」
クラスの人達は喜び騒ぎ出すなか一番後ろの二席だけどんよりとした空気が漂っていた
そして冒頭に戻る
「リゼルよ……お前は何に対して慌てているのだ?」
リゼルは悟りを開いたかのような笑顔を彼に向け
「つい昨日のことをお忘れになられたのですか?」
「昨日………?」
リゼルは諦めの境地に達したのか
「お父様の命により魔王軍第3部隊の指導を任されたのですわ。そして、本日来るのが魔王軍第3部隊ですわ。これでもう、お分かり頂けたと思いますわ」
「………お前も大変だな」
リゼルはふと気になったことをたずねた
「まさか、お父様にあなた様がここに来ていることは…………」
「言ってない」
「……やはりそうでしたか。お互いばれないように頑張りましょう」
「……そうだな。ばれなければ」
と思っていた時もありました。昼の実技に移動したときリゼルは髪型と魔力の質を変えていたが不安過ぎて真っ青な顔をしていた。一方、アスターは眼鏡をかけ髪型や色を出来る限りの変えてグランドへ来ていた
「お前大丈夫か?」
「……大丈夫なわけございませんわ。あなた様の方が心配ですわ」
「俺のどこが心配だ?」
リゼルはまた、ため息を着いてから
「髪型や色、眼鏡をお付けになっただけでは直ぐにばれますわ」
「………」
何故だとばかりに見てくる彼にダメな教え子を見るような眼差しでまた、ため息をついてから
「お父様は、魔力の質や色を確実に視てくるのですわ。それを変質させない限り見破られますわ」
「なるほどな」
本当にこんな方が魔王だなんて誰が思うのでしょう?まぁ、言っただけで理解し魔力の質を変質出来るのは流石としか言えませんわ
「2つのブースに分かれ魔王軍第3部隊皆様や総司令官様に己の実力をお見せするように!」
試験が始まると緊張し出す者や高揚しウズウズしだす者。計略を考える者がいるなかで一際別の意味で緊張しているのは、リゼルと彼だけだろう
試験が終わり、本来の力以上を出せて喜ぶ人や自分の力を出せずに落ち込む人。満足げの人。そんな彼らに囲まれながら一番後ろに並んでいたリゼルとアスターは、隣どうしにある互いのブースに立ちこっそり視線を合わした
「よろしくお願いいたしますわ」
隣のブースでも
「よろしくお願いします」
と礼をしていた
リゼルの父親と副隊長はアスターのブースに。リゼルのいるブースは隊長がいる
指示は隊長が二つのブース同時に指示を出している
「まずは、得意魔法を放て」
「はい」
リゼルは、一番苦手な青色の魔法の中で氷魔法を放ち出来る限り少量の魔力量で出来る睡蓮を作り出した
一方、隣のブースでは彼が赤魔法の中級に当たる炎でバラを作り出した
お互いに次の指示が来るまでその状態を待機させた
次は副隊長が
「2色持ちなら、もう色も放て。1色持ちなら、別の形に」
「「はい」」
リゼルは、数羽の鳥を緑色の魔法である風で作り出した
アスターは、黄色魔法で雷で鳳凰を作り出した
これで終わりだと思い二人して安堵していた。…………が、終了の合図ではなく
「双方それを攻撃に展開し直し放なってください」
今回、指示を出したのは隊長や副隊長出はなく総司令官であるリゼル父親だった
周囲はその指令にどよめいたがリゼルは
……お、お父様!?それは、ちょっと困りますわ!!
父親に助けを求めるように視線を向けると彼の眼には それぐらい隠していても出来るな と言う問いかけですらなく、それぐらい隠していてもやれ と言う命令に近かった
リゼルは本来なら攻撃に変える場合は、相手にばれないように全てを同時に変えていた。……が、魔力の質と量を変えているためそれをやると気づかれてしまう
……仕方ないわ。一つ一つ消しては展開し直すしか方法はありませんわね
リゼルが展開し直しを始めた頃アスターは一つも消さずに一つ一つ攻撃に展開したものを増やし、不要になったものだけを一斉に消した
アスターのやり方にクラスの人達や教員がどよめいたが、魔王軍第3部隊の人達はリゼルの方を向きそのやり方に驚きを示していた
一方、リゼルの父親は無表情だがその目は満足げだった
「双方、作り上げた物を一つの風景に変えなさい」
すでに指定し抑えている魔力量がギリギリでリゼルは疲労を感じ始めていた
……これは危険ですわ。このまま本来のぶんを押さえつけたまま少量の魔力のみを使うなんて……
リゼルは再度、父親に視線を向けるとそこには 心配が少量と耐えろと言う命令が見えていた
リゼルは仕方なく頷き彼に視線を向けるとすでに完成していた。彼は一面に咲き誇る薔薇に夕日が差し込み空には鳳凰が飛んでいる
彼女はもう一度ため息をついてから目をつぶり、残り少量の魔力を出来る限りの使わずに二つの魔法を組み合わせて和風の庭園を作り出した
他の人達が彼の作品を見て感嘆しているがリゼルにとっては、お互いの作品を維持するだけで精一杯だった
「双方ご苦労様です」
終了の合図が出たので、リゼルは全ての魔法を総キャンセルした
零コンマ一秒の誤差もなく彼の作品も同時に崩れた。魔力のケースで止められていたものが一斉に制御されずにブースの外に向かって流れ出す。それに気づき慌てて逃げ出す人々
その光景に慌てて魔法を放とうとする魔王軍第3の人達を総司令官が止めアスターはその光景を愉しそうに眺めていた
一方は愉しく見学し一方は阿鼻叫喚となっている風景にリゼルはため息をつき小声で
「相殺」
と己の極僅かな魔力を言葉に乗せ、本来荒れ狂いクラスの人達や教職員を襲うはずだった魔力は一瞬にして光の粒子となって消えた
それに気づき喝采を浴びるのはその場にいたアスターと魔王軍第3部隊の彼らだけだった